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バレー男子 28年ロス五輪へ試金石の8強…ブラン監督のレガシー 細かすぎる指導、グローバル化

スポーツ報知 2024年8月7日 5時0分

◆パリ五輪 第11日 ▽バレーボール男子準々決勝 日本2-3イタリア(5日、パリ南アリーナ)

 5日の男子準々決勝で日本はイタリアに2―3で逆転負けした今大会を8強で終えた。2017年のコーチ時代から8季、日本代表を強化したフィリップ・ブラン監督(64)は今大会限りで退任。8強で終わったパリ五輪だったが、残した功績は多く、2028年ロス五輪への試金石となる8強だった。

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 最後の1点を取りきれずに惜敗となった。目を赤らめたブラン監督は、戦い抜いた石川祐希、高橋藍らをハグでたたえた。「4強の夢もかなわなかった。悔しさは残るが、いいチーム作りができたことは、誇りに思う」。敗戦後、選手に胴上げされ、3度宙に舞った。

 2大会連続で8強の壁を越えられなかった。だが、中身は違った。前回東京大会は29年ぶりの1次リーグ突破が目標だった。準々決勝ではブラジルに0―3で敗れ、攻守ともに歯が立たなかった。パリは大会前に52年ぶりの金を目標に据え、強豪・イタリアを倒しにいった。「勝てそうなところまで持っていけた。日本がトップレベルのチームと戦えることは示せた」と、悔いの中に成長を実感した。

 フランス人のブラン氏は2017年、有能な外国人コーチを求めた中垣内祐一監督時代にコーチに招へい。21年東京大会で8強に導き、同10月にゲーリー・サトウ氏(13年~14年)に続く2人目の外国人監督に就任した。「日本のようなチームを強くしていく過程が面白い」と日本を強く引き上げた。功績は大きく分けて3つある。

 【細か過ぎる指導】

 ミーティングや記者会見の前には原稿を用意し、年間予定はエクセルで自ら作成し、年度初めに提出する「マメ」な性格。練習中は気になれば1プレーで止め、映像を見せながら分かるまで説明。後から言うことはせず、その場で意識付けをする。藍も「最初は常に細かい部分を言われるのでストレスもあったが、精度の高さにつながっている」

 【伝統の守備と攻撃の連係の精度の向上】

 21年に世界を知る石川を主将に据え、2年前からはブロック、ディフェンスの組織的な守備を磨いた。日本は小さくても、データを基にブロックでタッチを狙い、その想定でレシーブに入る。欧州で主流の戦い方を植え付けた。

 【グローバル化】

 コミュニケーションを取るべく積極的に面談する。最初は選手もあまり話さなかったが、監督と話をしようと外国語を勉強するように。コーチに就いた7年前は、海外で戦ってきた石川以外はそれほど英語を話せなかったが、今ではほぼ全員が英会話が可能。海外挑戦のハードルも下がり、藍や宮浦、大塚ら海外を視野に入れてきた。

 全国高校選手権などを視察したり、昨年末の大学生有望選手合宿にも顔を出す。「若い選手と共に成長する」意識を持ち、22歳の藍や20歳の甲斐らを見いだした。「集大成」のパリで52年ぶりのメダルに届かなかったが、「今後は日本チームの1番のファン」とほほ笑む名将が、日本にレガシーを残した。(宮下 京香)

 

 ◆フィリップ・ブラン 1960年5月20日、フランス・モンペリエ生まれ。64歳。フランス代表で自国開催の86年世界選手権最優秀選手。88年ソウル五輪8位。91年に引退し、指導者に転身。2001~12年までフランス代表監督を務め、02年世界選手権で同国初の銅メダル。4~16年にポーランド代表コーチを歴任し、14年世界選手権優勝に導く。17年から日本代表コーチ。2121月に同監督就任。193センチ。

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