◆パリ五輪 第１２日 ▽スケートボード女子パーク決勝（６日、コンコルド広場）
６日に行われた女子パーク決勝で、２１年東京五輪銀メダルの開心那（１５）＝ＷＨＹＤＡＨ ＧＲＯＵＰ＝が、最終３本目に９２・６３点をマークして再び銀メダルに輝いた。夏季五輪で日本人史上最年少の１２歳１１か月でメダルを獲得した前回から３年。中学生から高校生となり、２大会連続メダリストとしても、冬季五輪スノーボードの平野歩夢の史上最年少記録を塗り替えた。草木ひなの（１６）＝スターツ＝は８位だった。
真夏のコンコルド広場を最高潮に沸かせた。最終３本目に銀メダルを決める９２・６３点をマークした開は両手を２度、力強く夏空に突き上げた。「自分が出したかったものが出せて、メダルも取れた。本当に後悔のない大会。過去一うれしい」。暫定３位で迎えた最終３本目。勝負の最終試技で、板の先端でコース縁を滑る得意の「ノーズグラインド」を高精度で決め、大歓声を浴びた。衝撃的な五輪日本最年少メダルから３年。身長が約２０センチ伸び、１７０センチの高校生となった１５歳は「東京よりうれしい」とほほ笑んだ。
トップ通過の予選で「決めたいランをフルメイク（全部成功）できた」と波に乗った。エア系（空中技）を武器にするトップ選手が多い中、「自分のやりたい技をできるようにしたい」と地上技を極める開。この日も他選手がほぼ使っていないレールをランに組み込むなど、オリジナリティーあふれる滑りで観客を魅了。「今、本当にハッピーです」。腰まで伸びた長い髪が爽やかになびいていた。
「楽しむ」がモットーで葛藤もあった。パリ切符を確実にした５月のパリ五輪予選の上海大会前、拠点とする札幌市「ホットボウル」のオーナー・堤裕介さん（４４）に「実はプレッシャーがある」と告白した。「心那が納得できる滑りをして、楽しめればいいんじゃない。一番大切なことは、そこだと思うよ」。堤さんが声をかけると開は号泣。張り詰めていた気持ちが楽になった。
日本の得意競技となってきたスケボー。開には「スケボーは努力だけじゃなくて楽しむことが大事」という信念がある。拠点では「皆と一緒に滑ったり、楽しいスケートもしながらやっています」と“カルチャー”としての部分も大切にする。原点を堤さんとの会話の中で思い出した。２８年ロサンゼルス五輪への道はすぐに始まる。「ロスも日本代表になれるように頑張りたいし、あとは大会だけじゃないスケートももっとしていきたい」。楽しみながら３度目の正直で黄金の夢をかなえる。（手島 莉子）
◆白シャツ羽織りへそだしに「かっこいい！」
オーバーサイズの白シャツを羽織ったへそだしスタイルで、爽やかにパリの舞台を舞った開。Ｘでは「ファッションもかっこいい！」と話題になった。実は札幌市の練習拠点のオーナー・堤さんが選んだ服装で「一緒に古着屋に行って、心那が好きな服を買ってあげたりもしたことがありますね」と明かす。開自身もおしゃれが大好きで、服の丈を切って自分好みにすることもある。
東京五輪時は足首に見える真っ赤なソックスが引き立つ、全身ホワイトのつなぎ。このスタイルを選んだのも堤さん。今大会に向けては服装以外にも「髪の毛先を赤にしたら、後ろから見て日本っぽくなるんじゃない？」と提案したが、そこだけは「髪の毛はちょっと無理」と断られた。開はパリに数日残るといい「買い物とかしたい」と、はにかんだ。（手島 莉子）
【上田豪Ｐｏｉｎｔ】身長２０センチ伸びてもバランス崩れず
開選手の３本目は彼女の得意とするノーズグラインドを武器にスライドトリックなども完璧な技術で乗っていった。そして、彼女だけが使っているウォールライドをラストに入れてくる前に、最後の挑戦となる難しい角度からジャンプボックスでトライするフリップインディーグラブ（板のつま先側を後ろの手でつかむ技）をメイクしたのが何よりすごかった。
東京五輪からの３年間で身長が２０センチも伸びたにもかかわらず、ノーズグラインドがより研ぎ澄まされていた。ノーズグラインドなどのトリックは体のバランスが非常に大切になるので、身長が急激に伸びると成功率が下がる。彼女は成功率を上げるために、パークスタイルはもちろん、ストリートトリックも楽しみながら練習していた。そこが身長が伸びても完成度が高かった秘けつだと思う。
今回はものすごく高いコースではないが、その分スピードがつけづらかった。さらに、レールも特設されてるので、パーク本来の滑りプラス、やはりストリートの要素が必要になった。トリックをしっかりと成功させないと、スピードをキープすることができない難しいコースだった。その点は普段からストリートも練習している開選手には有利に働いた。（プロスケートボーダー・上田 豪）