◆JERA セ・リーグ 巨人3―3広島=延長12回引き分け=(7日・東京ドーム)
独特の柔らかい肘使いで、さばいた。これが巨人・坂本勇人内野手(35)の真骨頂だ。6回先頭、1ボール2ストライクから床田の投じた内角低めの142キロ直球に反応。両腕をたたみこみながら引っ張ると、白球は左翼線で弾む。二塁ベース上、背番号6は息を整えながら、淡々とバッティンググラブを外した。5月22日の中日戦(東京D)で4安打を放って以来となる猛打賞。「引き続き打てるように頑張りたい」。打撃不振から1軍復帰後初の1試合3安打で、復調を示した。
目覚めを告げた。2回1死一塁で外角のツーシームを中前に運び、1軍復帰後最長となる4試合連続安打をマーク。4回無死一塁では外角の直球を引っ張り、左前安打とした。さらに、7回1死満塁では内角に食い込んでくるカットボールを捉えて左翼ポール際への大飛球。惜しくもファウルで満塁弾とはならなかったが、らしいスイングを繰り出した。誰よりも復活を願っていた阿部監督は「あと、ここって時にやってくれたら100点でしたけどね」と7回1死満塁での三直が併殺になったことを残念がったが、さらなる上昇に期待を込めた。
どん底にいた。打撃の状態が上がりきらない。打率は2割5分前後を推移し、長打も減った。「全然良くない」。暗いトンネルから抜け出せなかった。ファーム調整を経験。7月12日に1軍へ戻ってからもノーステップ打法を取り入れたり、打席での立ち位置を変えたりした。
復調の糸口を探るべく、客観的な数値と、自身の感覚や経験をすりあわせる作業を増やした。打撃練習中はバットスピードやスイングの角度、振りの加速度、インパクトのポイントなど、さまざまな数値をタブレットで首脳陣やアナリストと確認。これまでは「今と昔は違うから」と、自身の過去の映像を見ることは少なかったが、意識的に見るようにもなった。柔軟に考え方をアップデート。「内容はどうでもいい。結果が全てやから」。はい上がるためにあらゆる手を尽くした。
プロ入り18年目に味わった苦境を乗り越え、明るい道が見え始めた。残り43試合。まだ時間はある。頼りになる男が、帰ってきた。(宮内 孝太)