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張本智和 2-0から逆転負け 背負い続けた「エース」の重さ…担当記者が見た

スポーツ報知 2024年8月8日 22時50分

◆パリ五輪第13日 ▽卓球 団体戦 スウェーデン3ー2日本(7日、パリ南アリーナ)

 7日の男子団体準決勝で世界ランキング4位の日本は同7位のスウェーデンに2―3で逆転負けし、決勝進出を逃した。第1試合のダブルスで戸上隼輔(22)=井村屋グループ=、篠塚大登(20)=愛知工大=組が先勝し、第2試合は張本智和(21)=智和企画=が男子単銀メダルのトルルス・モレゴールとのエース対決を制したが、後半のシングルス3試合を落とした。9日の3位決定戦では世界3位のフランスと対戦する。張本智が背負ったものを、担当の宮下京香記者が「見た」。

 これほど立ち上がれない張本智を見たのは初めてだった。第5試合、相手のマッチポイント。張本智のバックハンドは相手コートに返らなかった。先に2勝を挙げ、決勝進出に迫ったが、3時間半の死闘の末に逆転負け。エースは膝から崩れ落ち、田勢邦史監督(42)に抱えられたが、再び突っ伏した。

 「この思い、この現実を受け止めなくていい方法があるんだったらいいけど…。皆が1点ずつ取ってつないできたタスキ。僕が勝つとかじゃない。僕が締めるだけ。気合とかどうでも良くて。勝つのが全てだった」

 戸上、篠塚組がダブルスを先取し、第2試合は張本智が男子単銀のモレゴールとのエース対決に勝利。団体戦の“ポイント”は抑え、昨年の欧州選手権王者に“完封”も見えた。だが、第3試合で戸上が格下に敗れ、ムードが変わり始めた。

 場内が完全アウェーになった第5試合。張本智は2ゲーム(G)を先に取った。「もう大丈夫」。そう思った瞬間の第3G。6―6で相手のシェルベリがサーブから3球目のフォアで攻め立てる。バックで応戦したが、そこから4連続失点。「戦術を最後まで実行できなかった。第3Gで決めきらなきゃいけない」。相手のプレー、会場の声援にも押され、最後は左足がつりそうになり、力尽きた。

 東京大会後、引退した水谷隼氏から継いだ形になった「エース」の座。周囲から、勝って当たり前のように言われることが増えた。まだ18歳。田勢監督も「智和の中での葛藤は感じた」と明かす。整理がつかない時は相談を受けたというが、張本智は「日本を引っ張る」と立場を受け止め、パリが近づくにつれ、取材時に自ら「エース」と口にする回数が増えた。背負った重さの分、ショックも大きい。

 まだメダルの可能性は残す。初出場の戸上と篠塚もメダルを取ることは、次に向けても大きい。エースはもう一度顔を上げて泣いても笑っても、今大会最後の一戦に向かう。(宮下 京香)

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