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村竹ラシッド 110メートル障害初決勝 96年の歴史に新たな光も「素直に喜べない」

スポーツ報知 2024年8月8日 22時55分

◆パリ五輪 第13日 ▽陸上(7日、フランス競技場)

 男子110メートル障害準決勝は7日に行われ、初出場の村竹ラシッド(22)=JAL=が13秒26(追い風0・1メートル)の1組4着となり、タイムで同種目日本勢初となる決勝進出を決めた。短距離&障害種目でも日本男子3人目の快挙。昨年の世界選手権(ブダペスト)5位の泉谷駿介(24)=住友電工=は3組で13秒32(追い風0・6メートル)の3着同着で敗退した。

 重い扉を開けた。世界から最も遠いと言われてきた種目の決勝に、村竹が進んだ。「着順で決めたかったので、素直に喜べない。とりあえず首の皮一枚つながった」。1928年アムステルダム大会で三木義雄が初めて出場(準決勝敗退)してから96年。日本人として初めての領域に足を踏み入れても、自身の走りに不満そうだった。

 スタート前の練習でハードルを跳ぶと普段より弾む感覚があり「闘争心を抑えられていない」と感じた。修正を試み、重心を低くしたことが逆効果。ハードル10台中6台に足をぶつけた。スピードに乗れず4位で駆け抜け、頭を抱えた。各組上位2選手、3着以下はタイム上位2選手が決勝に進む。「何年寿命が削り取られたか。生きた心地がしなかった」と後続の結果を待ち、背中を追ってきた大学の先輩、泉谷らのタイムを0秒06上回って決勝進出を決めた。

 競技を本格的に始めたのは、千葉・松戸一中から。足の速さはチームで3、4番手でリレーメンバーに選考されるかギリギリの選手だった。足首の強さとバネを武器に障害種目に挑戦すると、開花した。当時顧問だった高嶋美佳教諭(47)は「リズムを刻む感覚が楽しかったのと、走って勝てない相手にハードルがあったら勝てる喜びもあったと思う」と振り返る。

 冬は千葉・稲毛海岸を走った。延々と続く海辺を「ゴールは自分で決めなさい!」(同教諭)と限界まで追い込み「つらいときは声を出そう!」と富士山に向かってみんなで目標を叫んだ。練習後は水遊びでクールダウン。メリハリの利いた練習で、松戸国際高3年時は全国高校総体を制すほどの力を付けた。レース前に、大声で気合を入れるのはルーチン。「息を整えて、声を出して気合を入れるんです」。この準決勝でも叫んで、レースに臨んでいた。

 「メダル獲得と12秒台で日本記録更新。世界の強豪相手に全身全霊でぶつかって戦えるように、頑張っていきたい」と村竹。日本陸上界の大快挙が、すぐそばまで来ている。(手島 莉子)

 ◆陸上男子短距離種目の五輪での決勝進出者 1932年ロサンゼルス五輪の100メートルに出場した吉岡隆徳は決勝6位。92年バルセロナ五輪の400メートルに出場した高野進は8位だった。

 ◆村竹 ラシッド(むらたけ・らしっど)

 ▽生まれとサイズ 2002年2月6日、千葉・松戸市。22歳。179センチ

 ▽競技歴 トーゴ人の父と日本人の母の元に生まれた。小学5年時から陸上を始め、松戸一中から本格的に110メートル障害を始める。松戸国際高3年時は全国高校総体制覇。順大に進み、22年世界選手権(オレゴン)は予選敗退。23年9月に日本記録タイ(13秒04)をマーク。24年6月に日本選手権初制覇。今春JALに入社。

 ▽オフの過ごし方 「アマゾンプライムで映画とかアニメとか見ます。近くの銭湯にも行きますね」。最近見た映画は「ジョーカー」

 ▽趣味 読書、ドライブ

 ▽110メートル障害での強み 中盤からの加速

 ▽お菓子1年分 今年7月に同所属で女子やり投げの北口榛花と共に、森永製菓とサポート契約を締結。記念として「ハイチュウ」と「inゼリー」とをそれぞれ1年分プレゼントされた

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