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来年東京世陸「絶対メダル」村竹ラシッド、男子110M障害5位入賞 32年ロス五輪6位「暁の超特急」超え

スポーツ報知 2024年8月9日 22時4分

◆パリ五輪 第14日 ▽陸上(8日、フランス競技場)

 男子110メートル障害決勝は9日に行われ、同種目で日本勢初の決勝進出を果たした村竹ラシッド(22)=JAL=が13秒21で5位入賞に輝いた。1932年ロサンゼルス五輪6位で「暁の超特急」と呼ばれた吉岡隆徳を上回る男子五輪短距離では日本勢の最高順位となった。

 日本陸上界に歴史を刻むレースを、村竹は全身で味わった。世界トップとの戦いに胸を躍らせ、わき上がる大歓声が心地よかった。「世界最高峰の舞台。緊張も不安もありましたけど、どんなに遅くても誰よりも楽しんでやろうと(思っていた)」。言葉通り、入場では人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のキャラクターが見せるポーズ「ジョジョ立ち」を披露。スタートを切ると、やや立ち遅れはしたが、中盤までメダル争いに加わる見せ場を作った。

 表彰台まで0秒12、距離にして約1メートル。五輪の男子短距離種目では過去最高の5位でフィニッシュラインを越えると「一番は、楽しかった」と声を弾ませた。初の五輪で世界との距離は遠くないと分かった。「まだ強くなれそう」。自身の未来に自信が持てる一本だった。

 スポーツの祭典をエンジョイできたが、5位という順位が引っかかった。「中途半端な順位」。今季の自己ベストはファイナリストの中で4番手の13秒07で「メダル争いに加われたかもと思うと悔しさが大きい」。フランス競技場では各種目で勝利選手が現れるたびに鐘の音が鳴り響く。「うらやましいなって」。優勝したホロウェー(米国)が奏でた鐘の音を一番近くで聞いた。

 感謝の込めて走り抜いた。同じく日本記録保持者の泉谷駿介が準決勝敗退。昨年の世界選手権で決勝への扉を開いた第一人者だ。順大の先輩、後輩で、共に山崎一彦コーチ(53)に指導を仰いでいる。「決勝で戦うことも不可能ではないんだって勇気をもらえた。あの人がいなかったら、今僕はここに立っていない」。準決勝後、「自分が落ちた分も頑張ってほしい」と話した泉谷の思いを、村竹は魂の走りで体現した。

 21年東京五輪は代表選考の日本選手権でフライング失格。大舞台をスタンドで見つめていた大学生は、22歳でファイナリストになった。次の目標は明確に決まっている。来年9月、東京で行われる世界選手権。「最大の目標はメダルを取ること。来年こそは絶対にメダルを取る。逆襲したい」。また新たな歴史を作るのは、村竹だ。(手島 莉子)

 ◆村竹 ラシッド(むらたけ・らしっど)2002年2月6日、千葉・松戸市生まれ。22歳。トーゴ人の父と日本人の母の元に生まれた。小学5年時から陸上を始め、松戸一中から本格的に110メートル障害を始める。松戸国際高3年時は全国高校総体制覇。順大に進み、22年世界選手権は予選敗退。23年9月に日本記録タイ(13秒04)をマーク。24年6月に日本選手権初制覇。今春JALに入社。179センチ。

 ◆日本勢初の決勝進出者 32年ロス五輪の男子100メートルで6位入賞の偉業を成し遂げ「暁の超特急」と呼ばれた吉岡隆徳(84年死去、享年74)。異名は同大会同種目で優勝したE・トーラン(米国)が「ミッドナイト・エクスプレス(深夜の超特急)」と呼ばれたことが由来。五輪短距離種目の日本勢入賞は92年バルセロナ大会男子400メートル8位の高野進まで現れなかった。

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