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「まだ甲子園にはふさわしくなかった」兄・吉田輝星が見守る前で力投も 金足農・吉田大輝 敗戦に涙

スポーツ報知 2024年8月10日 6時0分

◆第106回全国高校野球選手権大会第3日 ▽1回戦 西日本短大付6―4金足農(9日・甲子園)

 金足農(秋田)の2年生エース右腕・吉田大輝投手は、西日本短大付(福岡)を相手に7回9安打5失点と初の聖地で苦しみ、応援に駆けつけたOBでオリックスの兄・輝星投手(23)の前で白星を飾れなかった。6点を追う最終回に4点を返す猛攻を見せたが、あと一歩及ばなかった。西日本短大付は、OBの日本ハム・新庄剛志監督(52)が進める選手の個性を重んじる野球で初戦突破。新潟産大付は、新潟県勢として40年ぶりの初出場初勝利を挙げた。

 たくましい仲間の姿が、感情を大きく揺さぶった。吉田はベンチで何度も手で涙を拭った。6点を追う9回。先輩が「お前を負け投手にはしない」と意地の反撃を見せる。3連打を含む4安打を集めて4得点。なお2死一、二塁の好機をつくったが、ここまでだった。7回154球を投げ、9安打5失点。初戦敗退に2年生エースは「ふがいない投球で点を取られ、3年生に申し訳ない。兄と同じ舞台に立てたのはうれしいけど、自分はまだ甲子園にふさわしくない投手と分かった」と自らを責めた。

 18年に同校を準優勝に導いた兄・輝星がネット裏から視線を送る中、初めての大舞台に苦しんだ。初回、先頭打者を安打で出すと、暴投で三塁に進め、直後にタイムリー。9球で先制を許した。5回には無死満塁とすると、犠飛などで4失点。秋田大会では常時セットポジションだった投球スタイルを「勢いをつけたかった」と、ワインドアップにチェンジ。兄をほうふつとさせるフォームから自己最速タイとなる146キロを計測し「低めの伸びはよかった」と意地も見せた。

 聖地で流した、2度目の涙だった。1度目は、兄を応援していた6年前、大阪桐蔭との決勝戦をアルプススタンドで見届けた。敗れた瞬間、小学5年生ながら「自然と涙が出てきた。あの時は自分がこの舞台に戻ってきたいと思った」と決意した。兄は100回記念大会、自身は甲子園100周年に背負ったエースナンバー。兄に初めて同じユニホーム姿を見せ、「来ると信じて投げていた。ふがいない投球で恥ずかしい」。来夏のリベンジを誓った。

 「雑草軍団」をけん引した夏が終わった。試合後、甲子園の土は持ち帰らなかった。「絶対に来年、パワーアップしてここに戻ってくるという気持ちで、土は持ち帰りませんでした」。兄が果たせなかった全国制覇の夢。“約束”がもう一つ増えた。(竹内 夏紀)

 ◆吉田 大輝(よしだ・たいき)2007年4月23日、秋田・潟上市生まれ。17歳。小学1年で天王ヴィクトリーズで野球を始める。天王中では軟式野球部。金足農では1年春からベンチ入り。1年秋からエースナンバー。球種はスライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリット。178センチ、85キロ。右投右打。家族は両親と兄のオリックス・輝星。

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