Infoseek 楽天

「努力ができる天才」飛び込み・玉井陸斗に感じる「金メダル」の可能性…担当記者が見た

スポーツ報知 2024年8月12日 5時30分

◆パリ五輪 第16日 ▽飛び込み(10日、アクアティクスセンター)

 10日の男子高飛び込み決勝で、2大会連続出場の17歳、玉井陸斗(JSS宝塚)が507・65点の2位。1928年のアムステルダム大会で日本勢が初出場してから史上初めて、銀メダルを獲得した。王国・中国の一角を崩し、4本目まで五輪2連覇の曹縁(中国)と金メダルを争った玉井。馬淵崇英コーチ(60)が英才教育で導いた日本飛び込み界のエースの歩みを、大谷翔太記者が「見た」。

 涙の馬淵コーチの首に、笑顔の玉井がメダルをかけた。手塩にかけてきたまな弟子と、歓喜の抱擁。初挑戦から96年。17歳の青年が日本飛び込み界に初めて銀メダルをもたらした。「すごい、うれしい。最高です」と玉井。馬淵コーチも、心を込めてねぎらった。「いや、もう、言葉では…。陸斗ありがとう。お疲れさま」。心血注いだ二人三脚が、結実した瞬間だった。

 中国から来日後、1989年からJSS宝塚でコーチについた馬淵氏。五輪6度出場の寺内健氏らを育て、王国・中国選手を超える潜在能力を見いだしたのが、小学1年から競技を始めた玉井だった。生年月日を確認し、東京五輪に(当初)13歳で出場できることを確認。東京をステップとし、パリでの勝負を掲げて小学5年からトップチームに引き上げた。

 空中で回転し、ひねる飛び込み。玉井の生まれ持った体幹の強さは、シニアにひけをとらない技の完成度を小学校高学年から実現させた。「第2の陸斗はいない」と言う素材を、寺内氏ら世界と戦う大人の集団に入れ、日本トップの指導者が導く。馬淵コーチが「あの子の運が強いのは、ここに出てきたということ」と語るように、種がまかれた環境は唯一無二だった。そして寺内氏が認める「陸斗は、努力ができる天才」。コーチ、そして先輩たちに必死についていった先に、パリで才能が花開いた。

 決勝では、4本目まで大会2連覇の曹縁と金メダルを争った。5本目の失敗さえなければ…と思いもしたが、今まで日本勢でメダルを取った選手がいないことにふと気が付いた。それほどに、可能性を感じさせた。28年ロス五輪に向けては「金メダルを取りたい。いや、取ります!」と、堂々宣言した。日本の史上初を塗り替え続ける玉井が、これからの日本水泳界をけん引する。(大谷 翔太)

この記事の関連ニュース