◆第106回全国高校野球選手権大会第6日 ▽2回戦 熊本工1―2広陵(12日・甲子園)
熊本工のエース右腕・広永大道(だいち、3年)が右ろっ骨の疲労骨折でベンチに入ることなく、最後の夏を終えた。
県大会初戦でファウルを打った際に負傷し、投げたのはわずか1イニング。後輩の山本凌雅(2年)らの踏ん張りで、甲子園まで来た。広永は医師から全治3か月と言われたが聖地への思いは断ち切れない。「間に合わせる」と懸命な治療をしたが間に合わなかった。
メンバー外を告げられたときは悔しさで「なかなか前を向けなかった」という。「エースなんだから下を向いてはダメ。チームのためにできることをおまえが一番しなきゃいけない」という先輩からの電話で気持ちを切り替えた。練習で仲間を献身的にサポートした。この日もボールボーイとして役割を全うしながら、ネクストバッターズサークルにいる選手に声をかけてナインを鼓舞した。
ナインは「広永のために」と1勝でも多く勝つことを約束した。グラブを託された山本が8回1/3を2失点の熱投で接戦を繰り広げたが、広陵にあと一歩及ばなかった。
試合を終えた広永は「仲間が投げられない自分を甲子園に連れてきてくれた」と涙ながらに感謝した。父・芳伸さん(52)も「正直(息子が)投げている姿を見たかったけど、仲間と一緒にここ(甲子園)に来られたのは本当にうれしいこと」と話した。
プロも熱視線を送るが、今後は大学に進学し、野球を続けるつもりだ。「本来なら自分が1番をつけて甲子園も県大会も勝たせたかった。(山本ら後輩を)自分が助けてあげたかった」。悔いと感謝を残し、聖地から去った。