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内村航平さん 五輪とは「希少で最高においしいチョコレート」 20年ぶり「応援側」参加のパリで実感…特別コラム

スポーツ報知 2024年8月14日 7時0分

 スポーツ報知特別コラムニストで体操男子の個人総合五輪連覇の内村航平さん(35)が2004年アテネ五輪以来、20年ぶりに「応援する側」として参加したパリ五輪を振り返った。体操男子の活躍ぶりに、「連覇」の難しさ、2大会ぶりに戻って来た有観客など、17日間の戦いで感じた「五輪」の価値を語り、再びの自国開催にも期待を寄せた。

 20年ぶりに「応援する側」で迎えた五輪が終わりました。現地に来て、この目で競技を見て、選手の戦う姿を見て、声を聞いて、なんだか自分も試合をやり遂げた達成感があります。

 体操以外では、柔道、レスリング、特にグレコローマンスタイルがおもしろかったです。正直、僕はこれまで、誰かが優勝しても「おめでとう」と少し人ごとのような感じでしたが、今回は「自分も勝った!」みたいな初めての感覚になりました。自分の首にもメダルがあるような。そんな感情になった自身に驚いた大会でもありました。

 また、ほんのささいなことですが、オフィシャルショップは並ばないと入れない、体操会場で目の前にいるみんなに会いたいのに、スタッフに普通に止められる。その瞬間、「ああ、引退したんだな」とも実感しました(笑い)。また、メダルを懸けた瞬間に立ち会うと、あのピリピリ感や緊張感は「もう一生、味わえない、羨ましい」とも思いました。

 体操は100点中、200点です。金メダルを獲得した団体決勝後、(橋本)大輝からは「着地が止まってなくてすみませんでした」と言われました。去年、僕は「大輝は最後、着地を止めないといけない」と伝えていたので、そこは大事に持ってくれているんだとうれしく思いました。改めてエースとしての自覚も感じ、4年後、絶対強くなるなと期待が高まりました。

 今回は「連覇」の難しさを感じた大会でもありました。五輪は2回目が一番難しい。僕も12年ロンドン五輪がめちゃくちゃ難しいなと思いました。僕自身は前回出たことで、「知ってるし、経験もしてきた」と、ちょっと初心を忘れてしまうような感覚があったのかもしれません。そこでコテンパンにやられて、また「五輪は難しい」と痛感するんですよね。連覇を逃した選手は絶対次、強くなって戻って来ると確信しています。

 五輪を例えると「希少で最高においしいチョコレート」かなと思います。中毒性があり、もう1回、欲しくなる。でも4年に1回しかない。その間はしんどいんですけど、もう1回味わいたい思いが上回り、乗り越えられる。五輪はいいなと改めて思いました。

 開幕前、僕は前回の東京大会で落ちたと感じる「五輪の価値を取り戻したい」という思いで今回を迎え、「スポーツで国民に活力を届ける」大会にしたいと思っていました。日本勢の活躍もあり、少しずつ戻っているのかなと感じます。

 フランス代表で柔道2冠のリネール選手とは対談し、また競泳4冠のマルシャン選手、バスケ男子のフランス戦も現場で見て、正直に「東京五輪が有観客だったらな…」とも思いました。自国の選手が登場した瞬間、大声援が送られ、会場がとてつもなく盛り上がる。「これだよな」と。だからこそ、いつかまた、自国開催の五輪が見たいなと思いました。=おわり=

 ◆内村さんのロンドン五輪

 世界選手権を3連覇し、金メダルを本命視された中、予選では鉄棒やあん馬で落下するなどミスが相次ぎ、9位。団体でもあん馬で倒立技にミスが出て優勝を逃した。個人総合では鉄棒の大技「コールマン(後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり)」を演技から外したが、安定感の高さで2位に1.659点差をつけて圧倒。悲願の金メダルを手にした。

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