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【明日の金ロー】子供たちが経験する「痛み」をストレートに描き出す「映画 聾の形」

スポーツ報知 2024年8月15日 21時0分

 パリ五輪の中継によるお休みを挟んで2週間ぶりの放送となる16日の金曜ロードショー(後9時)は、少年漫画誌「週刊少年マガジン」で2013~14年に連載された大今良時さんの漫画をアニメ化した「映画 聾(こえ)の形」(16年)が放送枠を25分拡大して登場する。公開当時は小規模での上映ながら、興行収入は23・0億円の大ヒットとなった。

 小学6年の少年・将也はガキ大将でクラスの中心人物。だが、転校生の少女・硝子がやって来たことで運命の歯車は大きく狂っていく。聴覚障害のある硝子に好奇心を持った将也は、事あるごとにちょっかいを出すが、あることがきっかけでいじめと受け取られ、非難されることに。すると今度は、将也がいじめられる立場となってしまった。

 それから5年後、高校生になった将也は硝子の元を訪ねる。再会し、お互いの気持ちを伝えることで小学生の時のわだかまりが消えて行く将也と硝子。その後、2人はかつての同級生たちとも交流するようになったが、ある事件が起きる―。

 わずかなボタンの掛け違いがいつの間にか仲たがいすることになってしまったり、気になる存在の異性に目を向けてもらおうとちょっかいを出していたら、それが相手を傷つけてしまったり…。程度の大小はあれども、同様の経験は誰しも一度は経験したことがあるのではないだろうか。

 その姿を逃げることなく、繊細な描写で真っ正面から映し出している。言葉の使い方が難しいのだが、「痛い」シーンも多々ある。それを見て、大人の視聴者は自分がかつてやってしまったことを反省するのかもしれない。そして子供たちは、登場人物たちに自分を重ね合わせることで「こんな痛い思いをしたくない」と感じ取るのだろう。

 「痛い」だけでは見るのがつらくなってしまうのだが、そこは現実ではなく映画。最後に希望があることで、ホッとさせられた。

 メガホンを執った山田尚子監督は、本作の製作当時は京都アニメーションに所属。同社を離れて最初の長編劇場作品となる「きみの色」が30日に公開される。

 本作と同じく脚本に吉田玲子氏、牛尾憲輔氏を音楽監督に迎えた同作は、周囲の人物が「色」で見える女子高生・トツ子が同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみと、音楽好きの少年・ルイと出会うことから始まる物語。6月の上海国際映画祭では最優秀アニメーション作品賞を受賞した。本作とは全く異なるタッチの作品ではあるが、高校生の瑞瑞しさと、自らの将来にもがく姿が、パステルカラーの柔らかい雰囲気で描かれている。(高柳 哲人)

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