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【甲子園】球児全員の思い代弁した選手宣誓…智弁和歌山・辻旭陽主将、一時は退部考えた過去も

スポーツ報知 2024年8月15日 15時0分

◆第106回全国高校野球選手権大会第7日 ▽2回戦 智弁和歌山4―5霞ケ浦=延長11回タイブレイク=(13日・甲子園)

 春夏通算4度の甲子園制覇を誇る智弁和歌山は大会7日目の2回戦で、今大会初となる2者連続弾により一時同点に追いついたが、タイブレークの末に力尽きた。大会の選手宣誓も務めた辻旭陽左翼手(3年)は1打数無安打2四死球だった。

 試合後のスタンドあいさつを終えた辻は、膝から崩れ落ちた。「勝てなくて申し訳ない」。昨秋の和歌山大会準決勝敗北から、日本一だけを見据えてチームをけん引してきた過程を、その姿が物語っていた。

 新チーム結成当初は「誰か、誰かが多いチームだった」と辻。名前順で日替わり主将を設定していたが、昨秋の県大会での敗戦を受け、「俺がやるしかない」と主将に就任した。しかし、名門での重責は想像以上だった。主将を務める直前には「『やめる』と言っていたこともあった。練習の時にチームのみんなの前で言ったこともあったみたいです」と父・一人さんは明かす。辻本人は「自分の状態も上がらず、衝動的に言っちゃいました」と振り返ったが、父からは「ここで逃げ出しても何も残らない」と激励を受けた。中谷仁監督、仲間からも言葉をかけられ再度奮起。「何が何でも甲子園」と、通学生と寮生に分かれている選手たちそれぞれに時間を作ってミーティングを敢行するなど、多くの時間を割いた成果が和歌山大会制覇で結実した。

 「僕たちには夢があります。この先の100年も、ここ甲子園が聖地であり続けること」。辻の選手宣誓に対し、世間では「高校球児全員の声」という声も聞かれた。誰よりも熱く、誰よりも甲子園に向き合ってきたからこそ、多くの人の心に響いた言葉だろう。「土台となるところは作れたと思う。後輩たちにはそれを引き継いで、監督をもう一度日本一にしてほしい」。道半ばで途絶えた夢を後輩に託し、大粒の涙と共に聖地を去った。(森口 登生)

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