◆第106回全国高校野球選手権大会第9日 ▽2回戦 早実1x―0鶴岡東=延長10回タイブレーク=(15日・甲子園)
涙はなかった。鶴岡東のエース左腕・桜井椿稀(つばき)は、晴れやかな顔でマウンドを去った。「1回から全力で投げた結果なので。悔いなく投げきりました」。121球の熱投も実らずサヨナラ負けとなったが、胸の内には完全燃焼の思いが広がった。
強力な早実打線を9回まで9奪三振無失点に抑える快投を見せる。両者無得点のまま延長タイブレークまでもつれ込んだ10回1死満塁、相手エース・中村心大に初球のスライダーを捉えられ、打球は右翼の頭上を越えた。試合後は早実ナインに「優勝してください」と声をかけ、固い握手を交わした。
兄・瑞稀さん(21)も高校時代は投手。練習では主に変化球を教えた。「カーブを教えたので、それが生きているのかなと」。くしくも椿稀はこの日、「カーブが一番よかった」と振り返った。
将来の夢にはプロ野球の審判を挙げる。「その前に大学に進んで、プロ野球選手になりたい」。再び聖地で花を咲かせるため、次の一歩を踏み出す。(松永 瑞生)