パリ五輪新種目のブレイキンは、女子の湯浅亜実（ダンサー名・ＡＭＩ）が金メダル、男子の半井重幸（第一生命保険、ＳＨＩＧＥＫＩＸ）が４位と好成績を収めた。日本代表のトレーナーを務めた「イサ・スポーツ・カイロプラクティック」の伊佐和敏さんは、日本初開催のブレイキン・ワールドシリーズ（２３年２月、北九州市）から専属トレーナーに就任。選手たちを近くで見続けた伊佐さんが、ブレイカーたちの魅力を語った。
初めての試みだった。ブレイキンで初めて代表トレーナーに就任した伊佐さん。これまで車いすラグビー、競泳など様々なスポーツを見て来たが、同競技を見るのは初めてだった。「ブレイキンは大会に一人で行く選手も多く、試合直前に体を触られるのが嫌だっていう人も多いと聞いていました。痛いなら痛いなりに自分で調整をしてきているから、急に『ほぐれた』となると違和感になってしまう。こちらとしても不安がありました」。
ブレイカーたちと関わると、不安はすぐになくなった。吸収力や向上心がとにかく高かった。「リスペクト、ラブを基本にしているから丁寧な人が多い。こちらが新しい提案をしたとき『理にかなっている』となったらとりあえずやるんです。自分のやり方が確立されていても、柔軟。よりよくなるための意欲がすごい」。選手らは伊佐さんの「筋肉と関節にアプローチする」ケアをすぐに調整に組み込んでいった。
女子の福島あゆみ（ＡＹＵＭＩ）は大会前日や当日の朝のアップ前など多めにケア。半井は移動日にがっつり施術など、各選手と相談しながらベストパフォーマンスへの準備を行ってきた。ケアするときは常に「選手がリラックスできる場所」を心がけ、競技のことは一切話さない。「日本のチームワークの良さ、パフォーマンスが発揮できる試合になってほしいです」という伊佐さんの願い通り、世間の心に残るダンスを披露した選手たち。伊佐さんはブレイキン界の一層の発展を祈っている。