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【明日の金ロー】「何も起きない」ことが、長く愛される作品となった?「となりのトトロ」

スポーツ報知 2024年8月22日 21時0分

 夏休みの金曜ロードショー(後9時)といえば、スタジオジブリ作品の放送が”お約束”だが、今年の「夏はジブリ!」は2作品。23日は「となりのトトロ」(1988年)がノーカットで放送される。金ローへは22年8月以来、19回目の登場となる。

 物語は昭和30年代、サツイとメイの姉妹が、病気で入院しているお母さんが退院後に空気のきれいな場所で生活ができるよう、お父さんと一緒に郊外に引っ越してくるところから始まる。ほこりだらけのおんぼろ屋敷と家の前にある森、そして大きなクスノキに、何かの存在を感じる2人。そんなある日、一人で遊んでいたメイは森の中に迷い込み、不思議な生き物・トトロに遭遇する。

 「既に何度見たか分からない」という視聴者の方も多いだろう。記者の周りにも「シーンを見ただけで、次のセリフが分かる」というくらい、繰り返し見ている人もいる。それでも、テレビで放送されることが分かると、ついつい見てしまう…。そこには「何も起こらない」ことが理由にあるのでは、と考えている。

 もちろん、厳密に言えば物語である以上、サツキやメイには幾つかの”事件”は起きる。ただ、先に公開された「風の谷のナウシカ」(84年)や来週の金ローで放送される「天空の城ラピュタ」(86年)と比較すると、それらの出来事は日々の生活の延長として起きることで、決して特別なものとは言えない。

 宮崎監督は、公開時に出版された書籍でのインタビューで、その点について「(ストーリーがないことは)初めから全然疑問はなかったですよ。ずいぶんストーリーができたな、と思ってたぐらいです」と言及。「それこそ、台風の一晩の中でも十分子供がワクワクできるような映画は作れると思うんです。台風の一夜は日常の中の非日常。それが面白くできないんなら、こういう映画は成り立たない」と説明している。

 「ナウシカ」や「ラピュタ」のように、どこか分からない遠い世界で主人公が冒険を繰り広げるのを見るのは、もちろん楽しい。だが、「もしかしたら、サツキやメイみたいに、自分もトトロに会えるんじゃないか」と子供たちに思わせることができる作りが、時代を経ても愛される作品となっているのだろう。その点は、先日放送された「トイ・ストーリー」に通じるところがあるのかもしれない。

 ちなみに、これだけ長く愛されている作品だが、当時の配給収入は約5・9億円(興行収入に換算すると約11・7億円)。実は興行的には失敗だった。(高柳 哲人)

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