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春に「雰囲気は最悪」だったチームが夏の甲子園準Vへ突き進んだ理由 TikToKも自主的に禁止に 選手同士で言い合った本音

スポーツ報知 2024年8月24日 5時30分

◆第106回全国高校野球選手権大会第14日 ▽決勝 京都国際2―1関東第一=延長10回タイブレーク=(23日・甲子園)

 頂点にあと一歩、届かなかった。関東第一のエース・坂井遼(はる)は一塁側のアルプス席に頭を下げると、熱い滴が頬を伝った。涙をぬぐう背番号1の姿を、真夏の太陽が照らした。

 「自分のせいです。でも全力を出し切った。悔いはないです。最高の仲間たちと最高の監督と、最高の場所でできたので。最高の喜びで終わりたかったけど…やっぱ悔しいです」

 先発した3年生左腕・畠中鉄心が6回無失点の快投。0―0の7回、出番は訪れた。9回には2死一、三塁のピンチを招くが、気持ちで後続を断った。だが、タイブレーク突入後の延長10回無死満塁、押し出し四球を与え、マウンドを譲った。準決勝まで全4試合で救援し、計15回2/3を無失点に封じた右腕が今大会、初めて与えた得点だった。米沢貴光監督(49)が延長突入前に感じた「疲労のある坂井は3回が限度かも」との不安は現実になった。3番手の大後武尊が直後に犠飛を打たれ、この回2失点。自責点は0で防御率0・00のままだったが、頂点には立てなかった。

 チームはどん底を乗り越えた。今春センバツは初戦敗退。春の都大会4回戦では修徳に0―1で完封負けを喫した。「雰囲気は最悪だった」とナインは証言する。主将の高橋徹平を中心に選手のみで何度も話し合った。「このままだと、夏が終わっちゃうよ」。本音を言い合い、就寝時間の厳守など寮生活から改善した。「野球に集中しよう」とTikTokなどSNSも自主的に禁止にした。坂井も「諦めるのはやめよう。腐るのはやめよう」と訴えた。一戦一戦強くなり、決勝の大舞台へたどり着いた。

 注目の進路は「プロ志望届を出すか出さないかは、監督さんと話そうかと」と熟考する構え。「言葉では伝えられない、いろいろなものを甲子園からもらった。最高の舞台でした」と坂井。魂を燃やした夏。黒土のマウンドからの光景は、一生忘れない。(加藤 弘士)

 ◆坂井 遼(さかい・はる)2006年5月8日、千葉・富里市生まれ。18歳。小学5年から富里リトルスターズで野球を始め、富里中では江戸川南ボーイズでプレー。関東第一では1年秋からベンチ入り。最速151キロ。今春センバツでは4回4失点(自責1)。50メートル6秒5、遠投115メートル。趣味けん玉。好きな言葉は「ありがとう」。178センチ、78キロ。右投右打。

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