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NHK大河「光る君へ」ついに「源氏物語」誕生! 対話が生み出した徹底的な生々しさ 第32回みどころ

スポーツ報知 2024年8月24日 13時0分

 女優の吉高由里子が主演するNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜・後8時)の第32回「誰がために書く」が25日に放送される。

 大石静氏が脚本を手がけるオリジナル作品。大河ドラマではきわめて珍しい平安時代の貴族社会を舞台に、1000年の時を超えるベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部/まひろの生涯に迫る。

 18日に放送された第31回「月の下で」は、まひろ(吉高)がいよいよ「源氏物語」を書き出すまでの心の動きが丁寧に描かれ、とても美しい回。自宅を訪れた道長(柄本佑)から中宮(見上愛)を慰めるための物語を書いてほしいと頼まれたまひろだが、物語を書くことがゴールではなく「自分はなぜ書くのか」という問いに答えを出していこうとする、対話の連続が見事だった。

 四条宮で出会った和泉式部/あかね(泉里香)は、都で流行している「枕草子」について「なまめかしさがない」「気が利いてはいるけれど人肌のぬくもりがない」とバッサリ。清少納言/ききょう(ファーストーサマーウイカ)がかつて「皇后様に影などはございません」「華やかなお姿だけを人々の心に残したいのです」と決意して「枕草子」を書き始めたことを思い出す。スタイルを確立している2人の姿から、まひろは自分らしさに悩むが、弟・惟規(高杉真宙)からの「姉上は根が暗くてうっとうしい」という直球指摘に、少しずつ書き手としての本質が見えてくる。

 越前の紙をまひろに用意する道長は、多数のオーディエンスがいるなかで「私もいつかあんな美しい紙に歌や物語を書いてみたいと申したであろう、宋の言葉で」「俺の願いを初めて聞いてくれたな」と密会中に交わした会話をガンガン出していく“三郎モード”。もはや隠す気もなさそうに見えてハラハラする。

 まひろに依頼の真意を見抜かれた道長は、本心は中宮のための物語ではなく、「枕草子」を超える書物を帝に献上するためだったことを白状。まひろは道長に「帝の生身のお姿を」とせがみ、生い立ちや定子(高畑充希)との思い出、詮子(吉田羊)との複雑な関係性などを徹底的に聞き出す。「千夜一夜物語」みたいで胸に迫るシーンだった。

 ソウルメイトとされる2人の関係性なら、帝の話をしながらも、結果的に道長自身の話になっていったであろうことが容易に想像できる。ともに月を見上げるシーンも、かつて2人が鳥辺野でひっそり弔った「直秀」という共通言語を出したことで、運命共同体である事実を再確認させる。「誰かが…いま俺が見ている月を一緒に見ていると願いながら、俺は月を見上げてきた」。ここまでの30数話でたびたび象徴的に演出されていた月のカットがここに帰結されていく。

 道長が帰宅した翌朝、真っ白な紙に相対しているまひろのもとに、物語が天啓のように降ってくる。書が書かれた色とりどりの紙がハラハラと落ちていくなか、まひろは何ともいえない顔でたたずんでいる。「源氏物語」の誕生。澄み切っているのに鮮烈な演出だった。

 現代でもよく、クリエイターの方が“アイデアが降りてくる”などと表現するけど、まひろの場合は、なんにもないところから生まれているわけでない。かつて恋文の代筆をしていたような経験や直秀らとの日々、これまで読んできた書物、転げ回るほど誰かを好きになった記憶など、いろんなものが集約されて生まれたものだったのだと感じる。天から降ってきている物語は、翻ってまひろ自身の物語でもあるのだ。

 まひろが情熱的に書き切った物語を手に取った一条天皇も、「えっ…これ…朕(ちん)?」と言わんばかりの表情で思わずページを閉じる生々しさ。皇后さまとの美しい日々が記されている「枕草子」、フィクションとはいえ妙にリアリティーのある描写が続く「源氏物語」。合戦シーンのない平安大河だが、文学デュエルがいよいよ始まろうとしている。

 そんななかで迎える第32回。一条天皇は道長の思惑通りにまひろの物語に興味を示し、そこで道長はまひろに中宮・彰子が暮らす藤壺へ出仕し、女房として働きながら執筆することを提案する。当然その狙いは、一条天皇が物語の続きを読むため、藤壺へ来ることを増やし、彰子との仲を深めるきっかけにすること。まひろは道長の提案に戸惑うが、父・為時(岸谷五朗)に背中を押され…という展開が描かれる。

 まひろ、ついに内裏に。ここまでの物語において、まひろパートと道長パートは分かれて描かれてきたが、ついに宮中で交わることになりそうだ。先週の予告、道長の北の方・倫子(黒木華)による「殿がなぜまひろさんをご存じなのですか?」に道長はどう答えるのか。想像して、オンエアで答え合わせしてみてください。(NHK担当・宮路美穂)

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