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叫んだ「行け!」坂本勇人72日ぶり5号2ラン 「今年はフェンス手前で失速することが多いので」

スポーツ報知 2024年8月26日 5時0分

◆JERA セ・リーグ 巨人2―0中日(25日・東京ドーム)

 巨人がベテランの活躍で中日に連勝した。6回まで大野に無安打に封じられていたが、7回に初安打が生まれると、坂本勇人内野手(35)が6月14日以来となる5号2ランを左翼席へたたき込み均衡を破った。投げては先発の菅野智之投手(34)が、7回1/3を5安打無失点で自身5連勝。12球団単独トップの12勝目を挙げた。阪神に敗れた首位・広島とのゲーム差は1に。わずか2安打で大きな1勝を手にした。

 無我夢中だった。確かな感触が残るバットを握り締め、坂本が叫んだ。「行け!」。熱い思いがこもった打球が左翼席前列に突き刺さる。ダイヤモンドを一周して笑顔でベンチへ戻るとナインが、そして声をからした菅野が待っていた。

 「智之が本当に頑張っていたので、何とかこういう場面で打ちたかった。今年は特にフェンス手前で失速することが多いので、なんとか行ってくれと」

 6月14日の日本ハム戦(エスコン)以来、72日ぶりとなる一発が決勝の5号2ランとなった。

 腹を決めた。0―0の7回に先頭のモンテスがチーム初安打の中前打で出塁し、1死一塁で打席へ。無走者だった過去2打席目はすり足気味のフォームで凡退したが「代走も出たし、思い切っていく要素しかなかった。後悔なく打席を終えられるかなと」と左足を振り上げ、初球の内角142キロ直球を打ち砕いた。阿部監督は「本当に大きなホームランでした。開き直って1、2の3で。そういうのができるからこそ、ああいう場面で打てるんだろうし」と長打狙いに絞った百戦錬磨の経験値に最敬礼した。

 同学年の大野が6回まで無安打投球。ともに認め合い、日本代表でチームメートになれば食事をともにして野球談議に花を咲かせてきた。度重なる故障を乗り越えた左腕の力投に「ああいう投球を目の前で見せられて、思うところがありました」。対戦成績は154打数47安打で打率3割5厘と、数々の名勝負を繰り広げてきた盟友を打ち砕いた。

 数々の経験を乗り越えてきたからこそ、痛みも分かる。10日の中日戦(バンテリンD)で休養日だった坂本に代わって三塁で先発した22歳の後輩・中山が攻守のミスで4回に途中交代。ベンチで唇をかむ若武者に自ら歩み寄ると、若手時代の経験も踏まえて試合に臨むメンタルや技術を優しいまなざしで助言した。ファーム調整中だった6月下旬にはG球場で2人きりで炎天下のフリー打撃をこなしたこともある。中山は「声をかけてくださってありがたいですし、今後につなげていかないと」と感謝。35歳のリーダーシップと経験値はチームの財産だ。

 巨人が2安打以下で勝つのは4月25日の中日戦(東京D)以来。4か月前と同じく、投のヒーロー菅野と2人でお立ち台に上がった。8度のリーグ優勝を経験してきたレジェンドは「久々に優勝争いできているんで、絶対に優勝できるように頑張ります」。残り28試合。しびれるV争いが続く巨人の中心に、頼れる男がいる。(内田 拓希)

◆津波で流されたサイン…被災兄弟と交流

 〇…岩手・陸前高田市出身の千田晃平さん(31)、京平さん(26)の兄弟が巨人・中日戦のファーストピッチを務めた。11年の東日本大震災の津波で母・博美さんが逝去。花巻東の外野手として15年夏の甲子園に出場した弟の京平さんは坂本の大ファンだが、サインを津波で流されてしまったという。坂本は練習後に2人と交流してサイン入りグッズを贈り、試合では決勝弾をプレゼントした。

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