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片岡仁左衛門&坂東玉三郎、当代随一の名コンビが「婦系図」初共演「刹那刹那、瞬間瞬間を大事に、今の私たちを見ていただきたい」

スポーツ報知 2024年9月8日 4時0分

 歌舞伎俳優の片岡仁左衛門(80)と坂東玉三郎(74)がこのほど、都内で「婦(おんな)系図」の取材会を行った。2人が同演目で共演するのは初めて。41年ぶりにお蔦(つた)を演じる玉三郎は「松嶋屋さん(仁左衛門)が何をしたいのか。近年はお互いを思い合う気持ちが大きくなった。どうすれば湯島の2人になれるか、全力を尽くすしかない」と気を引き締めた。

 当代随一の名コンビ。取材対応でも2人の息はぴったりだ。演じる主税の魅力を聞かれた仁左衛門が「ただ体と気持ちが動くだけだから、役の分析はできない」と困惑気味に話すと、玉三郎が「代弁しましょうか?」と助け舟。「松嶋屋さんは(忠臣蔵の)由良之助のように芯がある役が好き。泉鏡花さんが描く男は、女にほれられているだけで芯がない。でも主税は鏡花作品の男にしては芯があるので、好きなんだと思います」と理路整然と説明。仁左衛門も「その通り」と納得した。

 「自分にとって、相手はどんな存在ですか?」という質問に、仁左衛門は少し照れくさそうに「私にとって大切な存在です」と即答。玉三郎も「私も同じです」と同調した。共演作の中で印象的な演目は、玉三郎が「お染の七役」「桜姫東文章」「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」「仮名手本忠臣蔵」「熊谷陣屋」を挙げて「数限りないですよね」とつぶやき、仁左衛門は「いっぱいあるね~」と目を細めた。

 仁左衛門は父・13代目仁左衛門の三男で、玉三郎は一般家庭出身。2人は歌舞伎界を代表する立役と女形で、いずれも人間国宝だが、幼少期から将来を約束されていたわけではない。「孝玉」「仁左玉」として脚光を浴びても慢心せず、切磋琢磨したからこそ、誰もが認める名コンビになれたのだろう。

 仁左衛門は「私は本当に喜の字屋のおじさん(玉三郎の養父・守田勘彌)から受けた影響が大きい。『若いうちに恥をかけ!』と言われて、いろいろな役をやらせていただいた。親同士が仲良くて、息子同士が自然と仲良くなって、できあがった縁ですよね。それに会見で、こういう(和やかな)雰囲気になれる人は大和屋さん(玉三郎)しかいない」と出会いに感謝した。

 これに対し、玉三郎も「若い頃から勝手に松嶋屋さんのことを兄弟だと思っていた」と振り返る。「我當兄さん、秀太郎兄さんとも仲が良くて、兄弟みたいな感じでした。仁左衛門さんより、むしろ秀太郎さんの方が仲が良かったくらい。仁左衛門さんは相手役だから、親しくなりすぎないようにしていましたね」と明かした。近年は楽屋で顔を合わせれば「次は2人で何をやらうか?」と話し合っているという。

 コンビを組んで半世紀以上。仁左衛門は「お客様が喜んでくださるのは、本当にありがたいことなんです。残念ながら、体力的に衰えていきますから、いつまでご支持をいただけるか。不安でもあり、励みでもある。とにかく刹那刹那、瞬間瞬間を大事に、今の私たちを見ていただきたい」と呼びかけた。玉三郎も「おっしゃる通りです」と深くうなずいた。(有野 博幸)

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