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震災を乗り越え誕生した淡麗辛口「宝船浪の音 純米酒 閖」…名取市閖上の佐々木酒造店・みちのく地酒巡り

スポーツ報知 2024年9月9日 10時57分

 宮城県名取市閖上(ゆりあげ)に、東日本大震災を乗り越え、地酒を醸す佐々木酒造店がある。1871年創業で「宝船浪の音」を代表銘柄に歴史を紡いできたが、津波で一度全壊した。5代目の専務取締役を務める佐々木洋さん(47)は「『昨日と同じ今日があって、今日と同じ明日がある』ような時間の流れでのんびりやっていましたけど、昨日と同じ今日はなかった」と蔵の屋上から町が流されるのを見つめていた。

 壊れていく町並みに絶望しながらも、頭の中ではすぐ未来を描いていた。日本は関東大震災、阪神・淡路大震災など壊滅的被害を受けても復活してきた国。「先輩方が復興をやって見せてくれている。そのDNAは必ず自分にもある」と津波で流されていく建物を見ながらも蔵の復活を心に誓った。

 津波が引き、がれきの山となった蔵では奇跡的に2本のタンクが元の姿で残っていた。「それを飲んでみたらおいしく、分析もきちんとして製品にできるとなって、手作業で瓶に詰めました」。1年後の12年3月11日に閖上の「閖」を取り、震災復興酒「純米酒 閖」として販売。現在の「宝船浪の音 純米酒 閖」と歴史をつなげている。

 12年12月には名取市復興工業団地の何もない倉庫の壁面全体をウレタン材で覆うなど改造し、全国の蔵元から機材を提供してもらい日本醸造史上初となる仮設の酒蔵として酒造りをスタート。環境や場所も違い大変なのは分かりきっていたことで「ああしよう、こうしようと新たな物を造りだす喜びや楽しさがありました」。7年後の19年10月1日には復活した閖上で新設蔵をオープンし、販売店は連日観光客でにぎわいを見せている。

 蔵を再起させた佐々木さんがおすすめする商品は、今の蔵を象徴する「宝船浪の音 純米酒 閖」。「非常に淡麗辛口なタイプのお酒で、宮城で取れるカキ、ホヤ、ホタテなどのおいしさや香りを楽しみながら、口の中でその余韻を生み出してくれるお酒」と太鼓判を押す。成人して初めて日本酒を飲む人たちを思って醸した「宝船浪の音 純米吟醸」もおすすめだ。

 新設蔵での酒造は約5年が経過し、現在はより幅広く佐々木酒造店のことを知ってもらうのが目標だ。「うちの酒蔵はたくさんの方々からご支援を頂いて、閖上もおかげさまで、たくさんの人がお越しになることができる町になった。うちのお酒を飲んでいただくことによって閖上に思いをはせたり、宮城の食や地元の食を楽しんでいただく実感を持っていただけたら」。復興に携わってくれた人への感謝の思いを胸に、愛される日本酒を醸していく。(山崎 賢人)

  ◆有限会社 佐々木酒造店 明治4年創業。本醸造から純米大吟醸の12種を販売。商業施設かわまちてらす閖上に隣接。住所は宮城県名取市閖上中央1丁目12番地の3。オンラインショップはhttps://shop.housen‐naminooto.com/

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