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糸井重里さんと森保一監督が共鳴した「スポーツ、文化芸術のある生活」…特別対談(9)

スポーツ報知 2024年10月11日 12時0分

 サッカー日本代表の森保一監督(56)と、コピーライター・糸井重里さん(75)のスペシャル対談。第9回は「スポーツ、文化芸術のある生活」。スポーツの価値と伝え方の重要性を知る両氏が語る、人生に潤いを与えてくれるものとは。(取材・構成=星野浩司)

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糸井さん「戦争が終わった頃、食糧難についてニュースになるわけです。買い出しに行くとか、混んでいる列車に乗って田舎にお米を分けてもらいに行ったとか。僕の大先輩の(詩人)吉本隆明さんが戦後を経験して、食べるのもやっとで、飢えて死にそうだという時代に、人が石けんや化粧品をほしがってたそうです」

森保監督「はい」

糸井「あるいは、広島に野球場や広島カープをつくろうだとか、軍隊で慰問の演劇があったり。なくても生きていけると思われてるものが、どれだけ必要なものか。指折り数えると、水やお米になるけど、すぐ近くのところにスポーツや、歌がある。これについて、バカにしているところは滅びますよね」

森保「戦争の時の話もすごく心に響きます。最近でいうと、コロナ禍で不要の外出を避ける中で人々が動けなかった時に、スポーツはなかなかできなかったんです。例えば、音楽はずーっと閉じこもって生活してる中で、日々の潤いや活力になったり、文化芸術では行き来しながらはできないかもしれないけど、自分が持っている部分で生きていく支えになったり、いろんなものが生きていく中で必要だって思えるものが、それぞれ感じられるといいなってすごく思いますね」

糸井「うん」

森保「我々はスポーツをする楽しさ、見る楽しさ、支える、関わる楽しさを生かしていけたらなと思いますし、スポーツだけではなく、いろんな分野のことがあると思うけど、子どもを大人にできる、大人を子どもにできると思うんです」

糸井「ああ、なるほど!」

森保「心を解放する時間にできたり、団体競技も個人競技も、アウトドアもインドアのスポーツも、目標に向かっていろんなつらいことがあっても、なんか乗り越えていこうみたいな、できないことをできるようにした喜びを知るとか、というところで生かしていただけるように。なくなったら困るという…」

糸井「困りますねぇ」

森保「そう思ってもらえるようになるといいなと思います」

糸井「なくなったことを想像してごらんって言いたいですよね。あぁ~、僕が昔やったゲーム(糸井さんプロデュースの「MOTHER」シリーズ)は『こどもはおとなに、おとなはこどもになってゆきます。』っていうキャッチフレーズがあったんです」

森保「そうなんですか」

糸井「楽しいことってそういうことですよね」

 ◆森保 一(もりやす・はじめ)1968年8月23日、静岡・掛川市生まれ、長崎市育ち。56歳。長崎日大高から87年にマツダ(現広島)入団。92年に日本代表初選出。国際Aマッチ35試合1得点。京都、広島、仙台を経て2003年に引退。J1通算293試合15得点。05年からU―20日本代表コーチ。12年に広島監督に就任し、3度のJ1優勝。17年10月から東京五輪代表監督。18年7月からA代表と兼任監督。21年東京五輪は4位。22年カタールW杯は16強。26年W杯まで続投。家族は妻と3男。

 ◆糸井 重里(いとい・しげさと)1948年11月10日、群馬・前橋市生まれ。75歳。株式会社ほぼ日代表取締役社長。コピーライター、エッセイストとして幅広い分野で活躍。78年に矢沢永吉の自伝「成りあがり」の構成を担当。79年に沢田研二の「TOKIO」を作詞。「おいしい生活。」「不思議、大好き。」など西武百貨店やスタジオジブリ作品のキャッチコピーなどを手がけている。スポーツ報知(紙面)でコラム「Gを語ろう」を連載中。妻は女優の樋口可南子。

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