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森保一監督「視覚から入り肌で感じてレベルが上がる」切磋琢磨がもたらす成長…特別対談(11)

スポーツ報知 2024年10月13日 12時0分

 サッカー日本代表の森保一監督(56)と、コピーライター・糸井重里さん(75)のスペシャル対談の第11回は「環境の違い、切磋琢磨(せっさたくま)がもたらす成長」。ブラジル、アルゼンチンのような強豪国同士のライバル関係が生む相乗効果について語り合った。(取材・構成=星野浩司)

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糸井さん「昔、アルゼンチンの人とサッカー中継を見る機会があって『アルゼンチンは南米の中で暗い。あの暗さがサッカーにも出ていて、それが良い。ブラジルとは同じ南米でも全然違う』って言われたんです」

森保監督「ブラジルが明るく楽しくいってる、その真逆のアプローチで、2つの国が南米の1、2位の争いをしていると想像しましたけど、スタイルは本当に違うと思いますね」

糸井「根本的な何がかっこいいか、が違うんですかね」

森保「国のアイデンティティーや文化の違いもあると思います。南米ではブラジルだけが突出して強かった歴史があって、アルゼンチンも強いけど、ブラジルに勝つためにどうしなければいけないか、挑む側と挑まれる側という戦い方に反映されていると思います」

糸井「よく対抗試合しているチーム同士は似ますよね。甲子園(高校野球)でもそう。それ、価値観、いいな、と思う発見が相手の中にたくさんありますもんね」

森保「それは、私が選手としてプレーしていた時も『自分たちのスタイルで』と言いながらも、相手がこれやっていたら『うま!』『すご!』『これ、試合中にもまねしてみよ』ってなる。その感覚はすごく分かります」

糸井「前に格闘技の人と話した時、ブラジルのブラジリアン柔術が一世を風靡(ふうび)して『なんか負けないらしいじゃない』みたいな人たちがいっぱい。何であんなに急に強くなってんのって言ったら、強いやつ同士が道場にいるんです。今日始めた人でも、そういう強い人たちがやっているのをそばに見ていると強くならざるを得ないんですよ、と」

森保「なるほど」

糸井「切磋琢磨という言葉があるけど、甲子園に出るような野球チームは、ちょっと野球できるような人が入ると『こいつらにはかなわねぇ』『やっていること、言っていることが全然違う。だから、そういうやつにもまれると強くなるんだ』という話を聞いたんです」

森保「レベルが高いところに接すると、まず視覚から入ってきて、実際に肌で感じて、みんなのレベルが上がっていくんですよね」

糸井「見えている景色が違うわけですよね、きっと」

森保「自然と目指すところが上になってくるのがあるんだなと、改めて感じさせてもらいました」

糸井「その意味では、海外のチームに入る選手が増えていったのは大きいことでしょう、やっぱり」

森保「大きいと思います。日本ではなかなか味わえない厳しさや激しさを、違う環境に身を置くことでさらに伸ばせる、培わなければいけないことに気付かされる。自然と身についていくところはあると思います」

糸井「知るは楽しむ、と同じことですね。当たり前が高いんですね、きっと」

森保「そうですね」

 ◆森保 一(もりやす・はじめ)1968年8月23日、静岡・掛川市生まれ、長崎市育ち。56歳。長崎日大高から87年にマツダ(現広島)入団。92年に日本代表初選出。国際Aマッチ35試合1得点。京都、広島、仙台を経て2003年に引退。J1通算293試合15得点。05年からU―20日本代表コーチ。12年に広島監督に就任し、3度のJ1優勝。17年10月から東京五輪代表監督。18年7月からA代表と兼任監督。21年東京五輪は4位。22年カタールW杯は16強。26年W杯まで続投。家族は妻と3男。

 ◆糸井 重里(いとい・しげさと)1948年11月10日、群馬・前橋市生まれ。75歳。株式会社ほぼ日代表取締役社長。コピーライター、エッセイストとして幅広い分野で活躍。78年に矢沢永吉の自伝「成りあがり」の構成を担当。79年に沢田研二の「TOKIO」を作詞。「おいしい生活。」「不思議、大好き。」など西武百貨店やスタジオジブリ作品のキャッチコピーなどを手がけている。本紙でコラム「Gを語ろう」を連載中。妻は女優の樋口可南子。

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