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「ご当地ソング女王」水森かおりの野望は全国制覇! デビュー30年目51歳「ここまで来たら…」残すは福岡&徳島

スポーツ報知 2024年10月6日 10時0分

 演歌歌手の水森かおり(51)がデビュー30年目を迎えている。20年以上にわたって全国各地を舞台にした曲を歌い続けてきた唯一無二の“ご当地ソングの女王”。これまでの歌手生活を振り返りながら、ご当地ソングに対する思いも語った。(松下 大樹)

 30年目に突入した歌手生活。「正直、そんなにたつんだ、みたいな感じ。先輩方が『30周年迎えました』って言ってるのをすごいなと思ってたけど、『そっか、自分もその年月やってるんだ』って」

 NHK紅白歌合戦に初出場してからの20年間は「あっという間だった」という一方、デビュー後の10年間は「つらいことばかりではなかったけど、ずっと楽しいことばかりでもなかった。涙を流すことの方が多かったかな」と葛藤の日々を振り返った。「自分の歩いてる道が正しいのかな、みたいな。迷いがありましたよね」

 仕事がなく、家で過ごす時間も多かった。「事務所に内緒でアルバイトしようかなって考えたこともあった」。デビュー時は22歳。同世代は社会人として羽ばたいていく時期で、何もしていない自分にもどかしさを感じた。「父も母も心配していたと思うんですけど、『どうなってるの?』とか一切言われなかった。ずっと黙って見守ってくれていた」と無言の支えに助けられた。

 そんな家族の話題になったとき、自ら切り出した。

 「デビュー当時、お酒の入った席で誰も私の歌を聴いてないステージがあって、父に愚痴ったんですよ。そしたら『目はお前の方を向いてなくても、耳は絶対にお前の歌を聴いている。誰も聴いてないから適当に歌えばいいやという気持ちでいたら、お客さんは見抜くよ。だから、どんな場所でも、どんな状況でも、どんな人数でも、そのお客さんのために精いっぱい歌いなさい』って怒られたことがあって」

 10人ほどのキャパしかない会場ですら、半分も埋まらないステージも多々あった。それでも、同じ空間にいる誰かの心に残ればと、気持ちを込めてマイクを握るようになった。

 数々の実績を残しても、その言葉を忘れることはなかった。「例えば、ショッピングセンターのイベントでたくさん集まってくださるけど、素通りしていくお客様もいる。自分はその方に届けられてないのかなって思ったりするけど、きっと、耳では聴いてくれているかなと。父の言葉は今でも支えになってますね」。晴れやかな表情で観客と目を合わせ、手を振ってくれる人には手を振り返す。水森のステージを見るとそんな姿が印象的だが、意識はその先にも及んでいた。

 紅白初出場につながった「鳥取砂丘」など、さまざまな土地を舞台にしたご当地ソングは、アルバム曲を含めて、最新の「三陸挽歌」まで45都道府県を巡ってきた。中でも印象的だったのは、2005年に発売した秋田から青森にかけて走る鉄道を歌った「五能線」の現地に足を運んだ時。「『何とも思ってなかった、生まれた場所の素晴らしさを認識できました』って言っていただいて」。各地の曲を歌うことの魅力に気づいた瞬間だった。

 ご当地ソングを歌い続けて20年以上。「やりがいと同時に、同じことを続ける大変さがある」と口にする。それでも「(作曲を手がける)弦哲也先生が『方向転換する方がよっぽど簡単。そこをあえて行かないのが水森かおりだし、俺はその道をずっと支え続ける』と言ってくださった。そういうスタッフの方の気持ちにも応えたい」とこの道で生きる覚悟を決めている。

 日本中を規則性なく縦横無尽に駆け巡っているご当地ソングだが、実は02年に発売した「東尋坊」以降から全ての曲にわたって、恋に破れた女性が旅をする一つのストーリーとして続いている。その女性は、どのような結末を迎えるのか―。曲の制作には全く関わっていないため、次にどの場所でどのような展開になるのか分からないというが、「なかなか成就しないですよね。でも、成就しないからこそ良いっていうのはありますよね」。そして、ニヤリと笑って続けた。「公私にわたり、ね」

 独り身を貫いて51年。失礼を承知で「曲のために結婚していないんですか?」と問うと「意識してではないですよ。良いのか悪いのか、ご縁がないだけで…。でも、結婚してハッピーな人が、恋に破れた曲を歌っても説得力ないじゃん」と笑い飛ばした。

 47都道府県制覇まで残るは徳島と福岡。「地元の皆さんも待っててくださっているので、やっぱり制覇したい。ここまで来たら福岡と徳島の歌も欲しいし、全部歌ってみたい」

 今後の目標を聞くと、初心に立ち返った。「デビューした時に、自分と同年代の人が抵抗なく聴ける演歌を歌える人であったら良いなと思ってたんです」。優しい笑みを浮かべ、自分に言い聞かせるように話した。「水森かおりを通して演歌も良いなとか、水森かおりの歌なら聴いていたいなとか、心地いいって感じてもらえたらなって」

 「全国制覇」を成し遂げるため、一人でも多くの人の耳に演歌を届けるため、水森の旅は続いていく。

◆原田龍二とデュエット

 〇…23日には、俳優の原田龍二(53)とのデュエット曲「モナムール・モナミ~愛しい人よ~」を発売予定。3月に行われた舞台「水戸黄門」で共演し、意気投合した原田とのハーモニーに注目だ。

◆大の巨人ファン 「日本一になって」

 〇…東京出身で、昔から巨人ファンの水森。4年ぶりのセ・リーグ制覇に「テンション上がりますよね」と目尻を下げた。ポストシーズンの戦いに向けて「ここまで来たら日本一になってもらわないと。頑張っていただきたいです」とエールを送った。

 ◆水森 かおり(みずもり・かおり)1973年8月31日、東京都出身。51歳。95年、「おしろい花」でデビュー。2003年、「鳥取砂丘」でNHK紅白歌合戦に初出場。「鳥取砂丘」「五能線」などで日本レコード大賞優秀作品賞を11度受賞。紅白には03年から21年連続で出場中。血液型B。

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