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高橋藍VS西田有志でバレー「SVリーグ」10・11開幕 「最初に注目を集めるため」チェアマンが仕掛けた

スポーツ報知 2024年10月9日 5時30分

 バレーボールの新リーグ「大同生命SVリーグ」は、11日に東京・渋谷区の東京体育館でオープニングマッチとして行われる、男子のサントリーサンバーズ大阪―大阪ブルテオン(B)戦でいよいよ開幕する。高橋藍(らん、23)=サントリー=ら日本代表の活躍が際立つ中、リーグも追い風に乗るべく改革を仕掛けるのが大河正明チェアマン(66)だ。男子プロバスケットボールBリーグの礎を築いたスポーツビジネスのプロが目指す「世界最高峰リーグ」への道筋を聞いた。(取材・構成=宮下京香)

 開幕を前にSVリーグへの期待は膨らむ。サントリーのホーム開幕戦(14日、対大阪ブルテオン)は発売開始から約50分で札止め。約6900人収容を見込む11日の東京体育館でのオープニングマッチもチケットの応募が殺到し、追加販売となった。ファンの声に応え、今月2日には急きょ、中継カメラでコートの見えにくい席との断りを入れ、6組12人の招待席を設けたほど。

 「観客に歴史の証人になってほしい」と考え、仕掛けた。バレー新時代を刻む日は「10・11」の金曜ナイター。大阪が本拠のサントリーと大阪Bの昨季決勝カードを、首都でアクセスのいい東京体育館に充てた。サントリーに今季加入した藍、大阪Bは西田有志(24)とパリ五輪代表でチームメートのエース2人が激突する。

 「各チームの本拠開幕戦を前に1試合を先出しにし、地上波で放映。この2つを前提に進め、(12日からの)プロ野球のクライマックスシリーズが始まる前の金曜ナイターになった。高橋藍選手がサントリーに入ったのも大きいし、最初に注目を集めるために開催地は東京。2戦目の大阪とダブルカードのイメージ」

 大河氏は銀行出身。行員時代に出向したJリーグでスポーツビジネスの道を開いた。常務理事としてクラブライセンス制度の導入に携わり、Bリーグではチェアマンとして腕を振るった。同氏が礎を築いたBリーグは昨季、1部(B1)、2部(B2)の観客数が前季比40%増の史上最多となる計452万人を動員。飛躍的な成長を遂げた。成功の方程式を知るプロは、バレーにも大きな魅力を感じている。

 「代表戦はテレビで放送するし、日本で世界大会がたくさんあり、する人も見る人もポテンシャルを持つスポーツだと感じていた」

 課題は日本代表は盛り上がるが、国内リーグに熱気がつながらないことだ。Vリーグ時代は運営が「アマチュアだった」と指摘する。

 「一部の特定選手のファンは何度も会場に来てくれるけど、それでは新規は増えない。試合開始時間も夜ではなく、チームが遠征から本拠に帰れる正午という時間設定。ファンが満足する仕組みを考えないといけない」

 7月のチェアマン就任時に米男子プロバスケットボールNBA、サッカーのイングランド・プレミアリーグなどを理想に「2030年に世界最高峰リーグ」を目標に掲げた。リーグ名のSは「Strong(強く)」、「Spread(広く)」、「Society(社会)」を意味し、成功のための3つの理念を込めた。

 「ここを目指したいと思われるリーグになること。1番集客でき、1番事業規模も大きく、各国の代表が最も集まる。2030年までには世界クラブ選手権で優勝したい。できない時も常に世界でベスト4に入るチームがいること。これが、僕が考える世界最高峰」

 初年度の1試合平均入場者数の目標は男子が2800人、女子は2000人だ。スポンサー収入も好調で、経常収益を29億円と見込む初年度の予算案では、昨季Vリーグから3倍以上収入が増えるとしている。多角的な視点でリーグを成長させていく方針だが、大河氏の視線は海外にも向く。

 「バレーはアジア圏で人気が高い。タイへ行った際にすごい盛り上がりを感じた。野球のメジャーは今年は韓国で、来年は日本で開幕する。みんなが大谷翔平選手を応援するように、タイでは地元出身の女子選手が大人気。タイ選手がいる日本のチーム同士のリーグ戦をタイで開催したら協賛社、テレビ中継がつく可能性が高い。海外に事業を展開し、新たな収益を増やしていくことを考えている」 モットーは「変化を恐れない。走りながら考える」。壮大な『大河ドラマ』を描いている。

 ◆大河 正明(おおかわ・まさあき)1958年5月31日、京都市生まれ。66歳。京大卒。学生時代はバスケットボール部。京都・洛星中時代に全国4強、洛星高時代は近畿大会準V。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行し、95年から97年にJリーグに出向。2010年に退職し、Jリーグ常務理事などを歴任。15年9月にBリーグチェアマン。20年6月に退任。22年9月にVリーグ機構の副会長。今年7月からSVリーグチェアマン。

 男子バレーは空前のブームだ。今夏パリ五輪の競技別視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で1位だったのが、4強を懸けて死闘を繰り広げた8月5日のバレーボール男子準々決勝・日本―イタリア戦の23・1%(NHK総合)だった。パリ五輪中継の上位トップ10でも男子1次リーグの日本―アルゼンチン戦が3位、日本―ドイツ戦が6位と大きく注目された。

 リサーチ会社の「TNC アジアトレンドラボ」が7~8月に行ったアジアのZ世代が推す日本のコンテンツ調査でも突出した人気ぶりだった。「著名人」の部の総合では「男子バレーボール日本代表」が堂々の1位に。タイと並び人気があるインドネシアでは男子日本代表とともに高橋藍も日本の著名人で1位に入るなどアイドル級の人気を誇る。

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