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冨家ノリマサ、奇跡の自主映画「侍タイムスリッパー」山口馬木也との立ち回りは手に汗握る名場面「魂をフィルムに刻んだ」

スポーツ報知 2024年10月9日 4時0分

 俳優の冨家ノリマサ(62)が、8月に池袋シネマ・ロサ1館で封切り以来、SNSの口コミなどの影響で全国250館以上に拡大した自主映画「侍タイムスリッパー」(安田淳一監督)で映画スターの風見恭一郎を好演し、注目されている。

 主演の山口馬木也(51)演じる会津藩士・高坂新左衛門が落雷により現代にタイムスリップする物語。新左衛門は時代劇の斬られ役として生きることを決意し、冨家演じる風見と出会う。自主映画ながら興収30億円超の大ヒットを記録した「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)の再来を思わせる「侍タイ(さむたい)旋風」に冨家は「まだ実感がないですね。フワフワ夢の中を歩いているみたい」と笑う。

 米農家兼映画監督という安田監督が脚本、原作、撮影、照明、編集・VFXなど1人で11役以上を手掛け、わずか10人ほどのスタッフと生み出した。「撮影は手作り感満載で、まるで部活の合宿。『次、何をするんだっけ?』『お弁当はいつ来るの?』とかワイワイ言いながら、楽しい撮影でした」。当初は劇場公開も未定だったが、「脚本が抜群に面白かったから、絶対に出演したいと思った。誰かが作品を見つけてくれて、広めてくれたらいいなと思っていました」と振り返る。

 1983年にNHK連続テレビ小説「おしん」でデビューして41年。俳優人生で初めてチラシ配りも経験した。「池袋シネマ・ロサで公開が決まって、監督と馬木也さんと3人で選挙活動みたいに宣伝しました。そういう気持ちにさせてくれる作品なんです」。笑いあり、涙ありで時代劇の立ち回りも楽しめる奇跡の自主映画は、9月から上映館が全国に拡大し、舞台あいさつは大盛況。出演者が登壇しない通常の上映でも劇場が拍手に包まれる異例の現象が起きている。

 冨家と山口による終盤の立ち回りが「手に汗握る名場面」と話題を集めている。「台本を読んで、いかに僕と馬木也さんの魂をフィルムに刻み込むか、ここが肝だと思いました。昔は年末の大型時代劇もありましたので、20代半ばから京都の撮影所に通って、松方弘樹さん、里見浩太朗さん、北大路欣也さんという大先輩から学んだことを全て出し切りました」。往年の映画スター役ということで、風格や貫録も意識した。

 11日からは、多くの海外映画祭で絶賛されている自主映画「最後の乗客」(堀江貴監督)が公開される。冨家と岩田華怜(26)のダブル主演作。冨家演じるタクシー運転手と岩田演じる娘の感動物語だ。「ヒューマンミステリーですが、心温まるファンタジーでもあります」。海外映画祭で高い評価を受けている55分の中編映画は、池袋シネマ・ロサなど10館から公開開始。順次、公開館を拡大する予定だ。

 両作品に共通する「作り手の意志の強さ」を感じている。「売れる物を作ろうとか、こうすれば当たるということじゃない。『これが作りたい』という強い思いが作品に込められている」。それに加えて「SNSの発達によって、本来なら埋もれてしまった良い作品に光が当たるようになった。そういう時代になったんだな」としみじみと語る。

 映画の勢いに合わせて、冨家の注目度も急上昇中だ。「『おしん』でデビューしてから、日が当たったり、当たらなかったりの役者人生。還暦を過ぎて突然、明るいところに来たので、まぶしくて、どこを見たらいいのか戸惑っています」と照れ笑い。「『この人が出ていると、何かいいよね』と言われる役者でありたい」と思いを込めた。

 12日には東京・渋谷のユーロスペース、池袋のシネマ・ロサで「最後の乗客」の舞台あいさつに登壇する。(有野 博幸)

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