Infoseek 楽天

演出家・藤田俊太郎氏「新しい価値観の作品を作りたい」演劇賞の栄冠を喜びつつ、未来を見据える

スポーツ報知 2024年10月10日 11時0分

 今年2月、読売演劇大賞で大賞と最優秀演出家賞に輝いた藤田俊太郎氏(44)。演出を手掛けた「ラグタイム」が5月の菊田一夫演劇賞でも大賞に選ばれ、「いま最も注目される演出家」と称される。

 演劇賞の栄冠を喜びつつ、未来を見据えている。「次の作品への挑戦権をいただいた。誰も見たことのない、新しい価値観の作品を作りたい。驚いたり、高揚してもらいたい」と現状に満足することはない。周囲からの期待も膨らむ一方だが、「創作の大変さはありますが、それを凌駕(りょうが)する喜びが演劇にはある」と少年のような笑顔で語る。

 東京芸大美術学部先端芸術表現科在学中に蜷川幸雄さん(2016年死去、享年80)の演出に魅了され、演劇の道へ。演出助手として10年以上、巨匠の薫陶を受けた。「蜷川さんは戯曲の読み解きなど、あらゆる力をお持ちですけど、仲間と手を取り合い、糸を紡ぐ能力が優れていた。強烈なカリスマ性で引っ張るタイプの演出家だと思われがちですけど、実は対話型でもありました」。数々の教えを胸に刻み、偉大な背中を追い続けている。

 演出を手掛ける舞台「天保十二年のシェイクスピア」(作・井上ひさし、12月9~29日、東京・日生劇場)は、20年以来4年ぶりの再演となる。任侠(にんきょう)の世界を描いた講談「天保水滸伝」をモチーフに、シェークスピアの全37作品が織り込まれ、「『ハムレット』の『生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ』など有名なせりふもあるので、見つける楽しみがありますし、シェークスピアに詳しくなくても楽しめます」と胸を張る。

 前回、高橋一生(43)が演じた主人公・佐渡の三世次は、浦井健治(43)が務める。「絢爛(けんらん)豪華 祝祭音楽劇」がキャッチコピーだ。「カオス、混沌(こんとん)と見せかけて、最終的に物語は一人の男に集約される。農民である佐渡の三世次の一代記。実はものすごくシンプルな構造なんです」と解説。さらに今回は「より人間の暗部を光でえぐる作品にしたい」と構想している。

 作品の将来性に太鼓判を押した。「50年前の戯曲ですが、普遍的なテーマが描かれ、その価値は時代を超えて残っていく。今後も上演を重ねていけたら」と意欲的だ。さらに、時代劇ドラマ「SHOGUN 将軍」のエミー賞18冠など、日本のエンタメ作品が世界的に評価されている現状を踏まえて「この作品も世界ツアーができるんじゃないか」と海外公演を夢見ている。

 前回は新型コロナの影響で11公演が無念の休止を余儀なくされた。4年の時を経て悲願の再演に心を躍らせている。(有野 博幸)

この記事の関連ニュース