9月にプロ野球ウエスタン・リーグの参入初年度を終えたくふうハヤテでは、かつて「セクシーすぎるウグイス嬢」として話題になった藤生恭子さんが場内アナウンスを務めていた。NPBの試合はオリックス職員だった2012年以来、12年ぶりの復帰。静岡に誕生した新球団への印象などを聞いた。(取材・構成=武田 泰淳)
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■「小幡ぁ(♡)」
鼻に抜け、吐息が漏れるような独特のアナウンスが響いた。「6番・ショート、小幡ぁ(♡)」。9月29日、くふうハヤテのシーズン最終戦で、藤生さんは対戦相手の阪神を担当。今季は最後の3連戦など1か月に1カード程度、約20試合で場内アナウンスを務めた。
「初戦で西浜選手のヤクルト移籍のあいさつがあって、第2戦で福田選手と折下選手の引退セレモニー。選手がみんな泣いて、私も涙が出てきました。ただ戦力外になって終わるのでなく、引退の花道を作ることができて、この球団のデカすぎる意義でしたね」
母・政子さんは元NHKアナウンサー。野球好きの藤生さんは独立リーグ・高知で場内アナウンスを始め、2008年から5年間、オリックス職員として2軍戦MCなどを担当した。
「私は息が抜けるところがあって、よく母から『下手』と言われてました。ただ、オリックスの選手やコーチが『もっと息を抜いて!』とおもしろがってくれた。私たちは何とも思ってなかったんですが、お客さんから『セクシーすぎる』と言われて(動画サイトの)ニコニコ動画にも出てました」
■育成の会社設立
08年に場内アナウンス・MCの人材育成に特化した会社を設立。オリックス退社後はバスケBリーグ、フットサルFリーグなどで専属アナウンスを担当。高知時代に同僚だったハヤテ・池田省吾社長から派遣の相談を受けたところ、自らも静岡に通うことになった。
「こんなすてきなチームはない。選手の雰囲気がいいし、裏方さんを大切にしている。赤堀監督は私がオリックスにいた時、コーチでお世話になったので、何か力になりたいというのもありました」
6月には県内の高校野球部マネジャー約30人に〝通常の場内アナウンス〟をレクチャー。藤生さん自身が「新球団として徐々に定着している」と感じるハヤテで来季も継続する見通しだ。
「リーグで1位になって、観客数でも両リーグ1位になってほしい。その力になりたい。私はアナウンスを使って何をやれるか。〝セクシーすぎる〟でお客さんが来てくれるなら、いくらでもやりますよ(笑い)」
◆藤生 恭子(ふじう・きょうこ)1979年6月7日、兵庫生まれ。45歳。伊丹市で育ち、野球への愛情から強豪校を求めて、茨城・常総学院に進学し、駒大へ。2008年に西宮市に「ベースボールプランニング」を設立。現在は約100人が所属し、複数のNPB球団にも場内MCなどを派遣している。