阪神の来季監督に藤川球児球団本部付スペシャルアシスタント（ＳＡ、４４）が就任することが１３日、分かった。３年契約とみられ、背番号は代名詞の「２２」が有力。近日中に正式発表される。師弟関係にある岡田監督のイズムを継承し、球団創設９０周年の節目に球児新監督が誕生する。
甲子園を幾度も興奮のるつぼにいざなってきたレジェンドが帰ってくる。岡田イズムの後継者に、これ以上の適任者はいない。藤川球団本部付ＳＡがこの日までに来季監督の就任要請を受諾。９月末に岡田監督の２年契約満了に伴う今季限りでの退任が決まり、球団首脳は水面下で打診をしていた。長期的なビジョンを視野に入れた３年契約のもようで、近日中に第３６代阪神監督が誕生する。
背番号は代名詞の「２２」が有力だ。入団時の３０から９２を経て０５年につけた番号で、変更のきっかけは球児氏のリリーフ適性を見い出した岡田監督だった。０４年オフに１７か２２に変える選択肢があったなか、大魔神・佐々木主浩（当時横浜）ら名守護神が背負っていたことから、指揮官の「小魔神くらいにはなれるやろ」という勧めで２２に。その期待に応え、「火の玉」の異名を取った剛速球でブレイクし、１次政権下の同年のリーグ優勝の原動力になった。
藤川氏にとっても「一番の恩師」と口にする名将からバトンを受け取り、再びタテジマに袖を通す上で最もふさわしい番号。球団も功労者に対する敬意から、来る日に備えて引退後の２１年以降は空き番にしており、満を持して復活することになりそうだ。
球児氏は９８年ドラフト１位で阪神入団。勝利の方程式ＪＦＫの「Ｆ」として一時代を築き、７８２登板、２４３セーブ、１６３ホールドはいずれも球団最多だ。メジャーや独立リーグ・高知でもプレーして、虎のユニホームを脱いでからはフロント入り。キャンプでは後輩の指導にあたる一方、編成業務にも携わり、ドミニカ共和国や米国で新外国人調査を行った。また、評論家活動で見聞を広めるなど二足のわらじを履き、コーチ経験の代わりにグラウンド内外で唯一無二の経験を積んできた。
チームは昨季１８年ぶりリーグＶ＆３８年ぶりの日本一。今季は連覇を逃したが、最後まで優勝争いを演じる２位だった。岡田監督の下、野球のイロハを学んだ藤川氏がその魂を受け継ぎ、球団創設９０周年となる２５年シーズンの覇権奪回を目指す。
◆藤川 球児（ふじかわ・きゅうじ）１９８０年７月２１日、高知市生まれ。４４歳。高知商から９８年ドラフト１位で阪神入団。０５年にプロ野球記録のシーズン８０登板、０７年はプロ野球記録の４６セーブ（ともに当時）。１２年に報知新聞社制定「第１４回ゴールデンスピリット賞」を受賞。同年オフに米大リーグのカブスへ移籍。レンジャースを経て、１５年６月に四国アイランドリーグｐｌｕｓの高知に入団。同年オフに阪神復帰。２０年１１月に引退後は球団ＳＡに就任し、２３年から現職の球団本部付ＳＡ。１８５センチ、９０キロ。右投左打。
◆岡田監督と藤川氏の師弟関係 藤川氏が阪神に入団した９９年に岡田監督が２軍監督就任。１軍監督となった０４年にリリーフの適性を見いだされ、０５年にジェフ・ウィリアムス、藤川、久保田で勝利の方程式「ＪＦＫ」を組んでリーグ優勝。岡田監督が辞任表明した０８年には、最後の試合となった中日とのＣＳ第１Ｓ第３戦の９回、球児氏がウッズに決勝２ランを被弾。「最後にとてつもなく迷惑をかけた」と謝罪したが、岡田監督から「お前で打たれて終わったから良かったよ」と声をかけられて号泣した。