２７日に投開票された衆院選で、裏金問題の「安部派５人衆」の一人として、兵庫９区（明石市、洲本市、南あわじ市、淡路市）から無所属で立候補した元経産相・コロナ担当相の西村康稔氏は、当選確実が報じられた。
午後８時の開票直後に各メディアが「当確」としたが、厳しい戦いだったこともあり、慎重な陣営は「ＮＨＫが出てから」と喜びを抑えて待ち続け、午後１０時２３分、ようやく「出た！」と騒いだ。
事務所に駆け付けた西村氏は、声がかすれて苦し気だったが「最初から大変厳しい選挙。逆風の中、どうなっていくのかと思ったが、応援していただいた皆さんのおかげで勝利することができました」と頭を下げた。
西村氏には花束に続き、明石名物の魚・鯛（たい）が祝いに贈られた。地元の漁協組合長は「この鯛には願いが２つあります。まずは“めでタイ”ですが、これから先、明石・淡路のために“頑張っていただきタイ”」。さらにもう一つ加えて「総理・総裁になって日本を守っていただきタイ！」と続け、事務所は拍手に包まれた。
西村氏は岸田政権時に経産相、内閣府特命担当相などを務めた当選７回の実績の持ち主。しかし、自民党派閥の政治資金パーティー収入の“裏金化”問題で１年間の党員資格停止に。非公認で無所属出馬となったが、自民の地元支部や公明が推薦した。
また、舌鋒鋭い論客としてメディアから引っ張りだこの元明石市長・泉房穂氏が昨年に後継指名して当選した丸谷聡子市長も味方に付け、教育無償化などを訴えて「もう一度原点に戻って、ゼロからの再出発」をスタートさせることになった。
選挙戦の強敵は、その泉氏の「一番弟子」を売りにした立民の新人・橋本慧悟氏で、橋本陣営は「裏金あかん！」を合言葉に前大臣を猛批判した。有権者からも「厳しい言葉をたくさんいただいてきた」と西村氏。一方、自身のＸでは、自民からの２０００万円の支援金報道について、支部の解散で口座も解約したため「処分が出て以降、党からの資金は受け取っておりません。したがって、党から助成金が振り込まれているという事実もありません」と真っ向から否定していた。
それでも政治とカネ問題を象徴する“裏金議員”のレッテルはぬぐえない。しかし、２６日の最後のお願いでは「裏金―」ののぼりを横目に「『裏金はあかん！』―まったく、その通りです！」と開き直ったように話し、政治資金の透明化を約束した。
これで当選８回。「自分自身、もう一度襟を正して、自民党をゼロから立て直していく」。選挙結果的には、みそぎを済ませた形になったが、自民の後退で、自分だけ“めでタイ”と言える状況ではなくなっている。