◆米大リーグ ワールドシリーズ第3戦 ヤンキース2―4ドジャース(28日、米ニューヨーク州ニューヨーク=ヤンキースタジアム)
ドジャース・大谷翔平投手(30)が28日(日本時間29日)、ワールドシリーズ(WS)第3戦の敵地・ヤンキース戦に「1番・DH」で先発出場。26日(同27日)の第2戦で二盗を仕掛けた際に左肩を亜脱臼したが、わずか2日で強行出場に踏み切り、3打数無安打も勝利につながる2四死球で貢献した。チームは3連勝で球団4年ぶり、大谷悲願の世界一に輝く確率は100%に。日本時間30日午前9時8分開始の第4戦で一気に頂点に駆け上がる。
打席に立っただけで十分だった。左肩の亜脱臼から2日。痛み止めの注射や薬、あらゆる手段をとって強行出場した大谷に対し、ヤンキース先発右腕・シュミットは初回先頭で1球もストライクが入らない。“顔で選んだ”ストレートの四球後、1死からフリーマンの先制2ランで悠々と生還。結果的にこれが決勝点となった。
異変は明らかだった。「テーピングをしたりはしているので、いつもと違う感じはしましたけど、そこまで大きく(スイングの感覚)は違わなかったかなと思います」と話したが、試合前セレモニーでベンチから出てきた大谷は両軍先発選手の中で唯一グラウンドコートを着用。中では黒いサポーターのようなもので左腕をつっていた。「冷やさないのが一番大事だと言われていたので、試合中も温めるような機械をつけて基本的に過ごしてました」と説明したが、予想外の登場に現地はざわついた。
出塁してリードする際は左手でユニホームの首元部分をつかんだ。肩が固定でき、スライディングした時に左手を地面に着かないようにする再発防止策。しかしファウルした後に顔をしかめ、スイングもタイミングを少しずらされると、左手がいつもより早めに離れた。「あまり覚えてないというか。痛い、痛くないという感じは。顔にどの程度出ていたかよく分からないですけど」。ギリギリの状態の中でも、3回の二ゴロは打球速度103・9マイル(約167・2キロ)を計測。投手に与える威圧感は少しも変わらない。
試合中に現地放送局のインタビューに応じたロバーツ監督は「打席に入るだけで存在感は大きい。ベストな状態ではないが、どれだけの状態でも、翔平はほとんどの選手よりもいい」と言い切った。この日の大谷は3打数無安打も2四死球で貢献。指揮官は「彼がプレーしていることにとても感謝している」とほほ笑みながら「明日も(先発メンバーに)入る」と断言した。
ついに、悲願の世界一に王手をかけた。「今は痛みもだんだん引いてきているので、自分のスイングが戻ってきているのかなと思います」と左肩が徐々に回復していることに手応えを示した。WSで43年ぶりに実現したヤンキースとの名門対決で3連勝。球団4年ぶりの頂点へ、過去のWSで開幕3連勝した24チームは全て勝利というデータも後押しする。「みんなであと1勝できるように、明日の試合に集中したい」。最後に訪れた困難を乗り越え、世界の頂点に立つ。(中村 晃大)
◆大谷の左肩亜脱臼 26日(日本時間27日)の本拠地での第2戦の7回1死、四球で出塁。2死後に二盗を試みたがタッチアウトとなり、しばらく立ち上がることができなかった。トレーナーらが駆け付け、中継映像には「肩っすね、肩」、「左」という音声が流れ、そのままベンチ裏へ。試合後にロバーツ監督が「左肩亜脱臼」と発表した。ニューヨークに移動したチームとは離れて精密検査を受け、別便で移動。27日(同28日)の全体練習には参加しなかったが、本隊から遅れて球場入りし、室内で個別調整した。
◆WS無傷3連勝 これまでのWSで初戦から3連勝した例は24度(引き分け挟む例も2度)あり、全チームがワールドチャンピオン。うち21度は1度も負けることなくスイープ。残る3例も4勝1敗で、2敗以上はない。引き分けも挟まない4戦4勝は19度。4戦先勝の7戦制のPS全体でも、3連敗から4連勝したのは、04年にRソックスがヤンキースを逆転した1度だけ。第4戦の1点を追う9回に、逆転と4連勝につながる劇的な二盗を決めたのはロバーツ(現ドジャース監督)。