巨人にドラフト3位指名された上武大の荒巻悠内野手(21)が30日、将来的な目標に本塁打王&打点王獲得を掲げた。群馬・伊勢崎市の同校で水野雄仁スカウト部長(59)、担当の大場豊千スカウト(47)から指名あいさつを受け、「ホームラン、打点でタイトルを取りにいきたい」と力を込めた。184センチ、93キロの体格で、スイングスピードはNPBトップ級に当たる160キロ超。数々の“飛ばし屋伝説”を誇るスラッガー。巨人の本塁打王の系譜に名を連ねることを目指す。
荒巻がたくましい左腕を伸ばし、指さした。指名あいさつを終えて向かった上武大グラウンド。「あれを壊してしまいました」。ポールまで95メートルの右翼後方に設置された10メートル超の防球ネット。フリー打撃でそのはるか上を越える打球を放ち、隣接施設に設置されたソーラーパネルを破壊したという。推定飛距離は約140メートル。将来の目標に「ホームラン、打点でタイトルを取りにいきたい」と大志を掲げた男にふさわしい逸話だった。
184センチ、93キロの体格から繰り出すスイングスピードは160キロ超と柳田ら球界を代表するスラッガーに迫る。フリー打撃で荒巻が打席に入ると、5人の部員が右中間フェンスの向こうにある小さな林の中へ。ボールの紛失が相次いだことで敷かれるようになったという“荒巻シフト”に向かってサク越えを連発する。今夏のロングティーでは122メートルのバックスクリーンを越える驚弾を放ち「(飛距離は)135から140メートルぐらいだったと思う」とニヤリと笑った。
その名を全国にとどろかせたのは、昨年11月の関東地区大学選手権決勝(VS日体大)。右翼席中段と左翼席に2打席連続弾を放ち、ドラフト候補に浮上した。広角打法も魅力のスラッガーは「ソフトバンクの柳田選手のように、フルスイングを貫くというところを心がけて、プロの世界でもやっていきたい」と相手投手にとって恐怖心を植え付ける打者を目指す。
ぴったりな“登場曲”もある。打席に向かう際に、同級生の尾崎投手がスタンドから槙原敬之の「遠く遠く」を熱唱する。大学進学で福岡・久留米から上京。「友達は福岡にいるんですけど、遠い中でも自分はここで輝くぞ」「打球を遠くへ飛ばす」という2つの思いを込めた曲をリクエストした。プロでも「考えておきます」と採用する可能性をにおわせた。
今季、巨人の左打者は14本塁打の丸を筆頭に計24発にとどまった。チームに不足している左の長距離砲として大きな期待がかかる。「少年野球の時から阿部監督に憧れていた。ジャイアンツの一員として優勝、日本一に貢献したい」。指揮官の直接指導を受ける日も待ち望んでいる。夢は大きく、打球は遠くへ―。ロマンたっぷりの長距離砲が、東京Dにどでかいアーチをかける。(内田 拓希)
◆荒巻 悠(あらまき・ゆう)2002年12月23日、福岡・久留米市生まれ。21歳。祐誠高では1年夏からレギュラーで、高校通算37本塁打。上武大では1年春のリーグ戦から出場し、公式戦の本塁打は計10本。守備位置は一塁、二塁、三塁。遠投110メートル、50メートル6秒2。184センチ、93キロ。右投左打。
◆荒巻に聞く
―プロになる実感は湧いてきたか。
「本日指名あいさつをもらって、やっと憧れのプロ野球選手になれるんだなっていう風に感じています」
―ドラフト指名を最初に連絡したのは。
「福岡にいる父と母に電話をしました。泣いて喜んでくれて。最初に『ここまで育ててくれてありがとう』と伝えました」
―憧れの阿部監督に聞きたいこと。
「もしお話できる機会があれば、1軍での打席の入り方、投手への対応の仕方というところをご指導をいただきたいなと」
―プロで対戦したい投手は。
「広島の森下投手。球界を代表する投手から長打、ホームランを打ちたいです」
―長打が武器なのはいつから?
「高校の時からです。体が大きくなって、コーチと本塁打を打つための練習をマンツーマンでしてきたのが今につながっていると思います」