◆米大リーグ ワールドシリーズ第4戦 ヤンキース11―4ドジャース(29日、米ニューヨーク州ニューヨーク=ヤンキースタジアム)
ドジャース・大谷翔平投手(30)が29日(日本時間30日)、世界一に王手をかけて迎えたワールドシリーズ(WS)第4戦、敵地でのヤンキース戦に「1番・DH」で2試合連続の強行出場。26日(同27日)の第2戦で左肩を亜脱臼してから3日ながら強烈なスイングを繰り出し、5回には負傷後初安打に初スライディングと制限のある中で懸命なプレーを見せた。チームは4連勝とはならず、歓喜の瞬間はお預けとなったが、第3戦から1日で起きた大谷の劇的な変化を中村晃大記者が「見た」。
ひと晩で“変わり身”を遂げていた。プレーボール直後の第1球。大谷はL・ヒルの高めの直球に反応し、体がのけぞるようなフルスイングを繰り出した。左肩の亜脱臼から2戦連続の強行出場。第3戦後の会見では「痛みもだんだん引いてきている」と話していたが、その通りに前夜のスイングとは明らかに強度が違った。
3回先頭では中飛に倒れたが、詰まりながらも飛距離380フィート(約115・8メートル)。左手の押し込みが利くようになってきたと推測する。5回無死一塁では左腕T・ヒルの初球を中前にはじき返して負傷後初、第1戦以来13打席ぶりの安打をマークした。2番・ベッツの遊ゴロでは再発防止のため左手でユニホームをつかみながら、二塁へ懸命なスライディングも見せた。
この日も打席間はグラウンドコートを着用。黒いサポーターのような温める器具で左肩を冷やさないように過ごした。ここまでは前日と同様だが、この日の左手は常にユニホームの首元を持っているのではなく、凡退してベンチに戻る際などは軽く腕を振って走っていた。味方の得点では左手でガッツポーズをつくるなど、着実に回復に向かっている様子が見て取れた。
ロバーツ監督が「何度も彼に聞いたが(肩の状態はスイングの)妨げではないようだ」と明かしたように、打撃への影響は周囲が思うより少ないのかもしれない。だからこそ、指揮官は「四球をつなげられる打席もあったのに、出塁を選ばず(球を)追うのは良くない」と注文も。その上で「今夜はスライディングを実際にしたんだから。ここまで順調だと思う」と言い切った。
チームはブルペンデーで挑み、初回にフリーマンがWS史上初の6戦連発となる2ランで先制したが、逆転され大敗。43年ぶりとなるヤンキースとの頂上決戦で4連勝はならなかったが、20年以来の世界一に王手である事実に変わりはない。過去のWSで開幕3連勝した24チームは全て勝利しており、しかも5戦目以内に決めている。データ上は第5戦で決まる確率は100%だ。
試合後のクラブハウス。試合中はテーピングを施している左肩にサポーターなどはつけず、黒いパーカを着て大谷は球場を後にした。リュックは背負うのではなく、右手で持ち、扉を開ける時は反転して背中で押した。そばにいた現地記者が「手伝おうか」と話しかけると、笑顔で感謝を示しつつも自分で全てをこなした。敵地で2度目の世界一挑戦となる第5戦は、大暴れの予感がする。(中村 晃大)