サッカー元日本代表でJ3沼津に所属する50歳のMF伊東輝悦が31日、今季限りでの現役引退を表明した。「マイアミの奇跡」として知られる1996年アトランタ五輪1次リーグ初戦のブラジル戦で決勝ゴールを挙げ、1―0の番狂わせの立役者となった。93年に清水でプロ入りしてからJ一筋32年目の最年長Jリーガー。J1からJ3まで計560試合のキャリアを積んだ鉄人は静岡県沼津市で記者会見し笑顔で「やりきった」と振り返った。
“テル”の愛称で親しまれた大ベテランがピッチに別れを告げる。今年8月31日で50歳。「今季の最初くらいから(引退を)考えていた。夏がきつくて、体が動かないなと。50歳までプレーできたら面白い、そんなおじさんがいてもいいんじゃないかという思いがあった」。家族には先週の日曜日に告げたという。東海大一(現東海大静岡翔洋)高から清水に入団して32年目。J1からJ3まで全カテゴリーで通算560試合に出場し「やりきった。十分過ぎるほど」と胸を張った。
168センチ、70キロと小柄だが、正確な技術と運動量を武器に日本が初出場した98年W杯フランス大会でメンバー入り。「いい思い出」として挙げたのが21歳だった96年のアトランタ五輪。初戦のブラジル戦で決勝ゴールを決めた。「今でも声をかけられるし、4年に一度思い出してくれる」と“マイアミの奇跡”を照れくさそうに振り返った。
来季以降は未定。チームは4位でJ2昇格の可能性を残しており、今季中は練習にも参加する。「このチャンスをつかんでほしいし、最後に一緒に喜べたら一番いい」と、できる限り貢献してクラブ初の昇格を花道とするつもりだ。残り4試合。ラストまでテルらしく走り抜ける。(武藤 瑞基)
◆伊東に聞く
―引退を決めたタイミングは?
「今季の最初には考えていた。チーム状況もいろいろあったので(発表は)今のタイミングになった」
―中山監督からは?
「まだ言ってないんです。強化から伝わっていると思っていたら、しっかり伝わってなくて。ゴンさんに申し訳ないので明日謝りにいきます」
―サポーターへメッセージは?
「一言ですね。これからもサッカー楽しみましょう。それに尽きます」
◆マイアミの奇跡 1996年7月21日のアトランタ五輪1次リーグ(L)第1戦で、西野朗監督率いるU―23日本代表は同ブラジル代表と対戦した。DFロベルト・カルロスらに加え、オーバーエージ(OA)枠でA代表のMFリバウドも招集した優勝候補に対し、日本は後半27分、GKジダとDFアウダイールが交錯した際のこぼれ球を、MF伊東輝悦が蹴り込んで先制。守備ではGK川口能活が28本ものシュートを防ぎ1―0で勝利した。その後はナイジェリアに0―2で敗れ、ハンガリーには3―2で勝ったが、得失点差により1次L敗退となった。
◆伊東 輝悦(いとう・てるよし)1974年8月31日、清水市(現静岡市清水区)生まれ。50歳。Jリーグが開幕した93年に東海大一高(現東海大静岡翔洋高)から清水入り。甲府、長野、秋田を経て17年から沼津に所属。日本代表は国際Aマッチ27試合出場。J1通算517試合30得点、J2で25試合、J3で18試合に出場。168センチ、70キロ。