歌舞伎俳優の尾上左近が1日、東京・歌舞伎座「十一月歌舞伎座特別公演 ようこそ歌舞伎座へ」(23日千秋楽)の「三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場」に出演した。
尾上松緑の長男で、9月の「妹背山婦女庭訓 吉野川」で坂東玉三郎演じる太宰後室定高の娘・雛鳥役に抜てきされ、注目された18歳。お嬢吉三に初役で挑み、「月も朧に白魚の…」から始まる名ゼリフを披露して喝采を浴びた。お嬢吉三は実は男で、女に化けて盗みをする役どころ。娘として登場し、途中から男としての本性を現す様子を見事に演じ分けた。
「白浪物」と呼ばれる盗賊が活躍する物語を多く手掛けた河竹黙阿弥の代表作。和尚吉三、お坊吉三、お嬢吉三という3人の盗賊を主人公にする全7幕のうち、3人が出会う「大川端庚申塚の場」は屈指の人気場面とされている。御家人崩れの悪党のお坊吉三は中村歌昇、元は弁長と名乗る吉祥院の所化で、今は盗賊となった和尚吉三は坂東亀蔵が演じる。