卓球女子で五輪3大会連続メダリストの石川佳純さんが全国各地を訪ねて卓球やスポーツの魅力を伝える「47都道府県サンクスツアー in 神奈川」が4日、横浜武道館で行われた。神奈川県卓球協会100周年記念のメインイベントとして企画され、一般観覧者を含め約900人が集まった。
石川さんにとって、神奈川は世界に羽ばたくきっかけとなった場所だ。横浜アリーナで行われた2009年世界選手権個人戦。当時16歳で世界ランク99位だった石川さんは2回戦で同10位の帖雅娜(香港)と対戦した。3ゲームを連取され、第4ゲームも3―9の崖っぷちから4ゲームを奪い返し、奇跡の大逆転勝利を収めた。自身のキャリアの中で「後にも先にも、あれ以上の挽回勝ちはない。世界を目指そうと強く思ったきっかけになった。自分にとってすごく大きな大会だった」と振り返った。
その後も横浜でジャパンオープン荻村杯など国際大会を何度も経験し、Tリーグでも木下アビエル神奈川の一員として5季プレーした。思い出の地でのサンクスツアー開催に「横浜は小さい頃から国際大会に出場してきて、自分のキャリアの中でターニングポイントになった大会がたくさんある。こうしてサンクスツアーで横浜に帰ってくることができて、すごくうれしい」とかみしめた。
イベントでは石川さんを14歳で代表に抜てきした2008年北京五輪女子日本代表監督の近藤欽司氏(現神奈川県協会会長)とのトークショーに始まり、県内の小中高生とレディース(女性の卓球愛好者)約80人への卓球教室も行われた。サンクスツアーでは小中学生を対象に実施することが多いが「横浜はレディースが盛り上がっていて、国際大会の審判をやってもらっている方だったり、お世話になった方もたくさんいる。いろんな年代の方と楽しむことができるのも卓球ならでは。こういうのもいいなと思った」と、幅広い年代との交流を楽しんだ。
参加者には現役引退後も変わらず貫く、チャレンジすることの大切さも伝えた。今年はパリ五輪でキャスターに挑戦。ゴルフやピラティス、キックボクシングにも取り組んでいるという。英会話も独学で勉強中で「日常会話ができるようになったら、世界が広がると思う。自分自身、中国語を学んだことですごく世界が広がったので、英語にもチャレンジしたい」と意欲を見せた。
22年4月に始まったサンクスツアーも今回で33回目を迎えた。昨年5月に現役を引退し「なるべく選手でプレーしていた時に近いものを見てもらえたら」との思いからペースアップ。今年は年間最多の19回の開催を数えた。「卓球選手生活をこんなにたくさんの方に見てもらってきたんだなと肌で感じることができて、自分自身を振り返る時間にもなる。そして今、卓球を頑張ってる子供たちに自分が学んできたことを伝えるというのはすごくやりがいもあり、ライフワークになっている」。年内の開催は今回が最後。来年も全国を回り、卓球の魅力や自身の経験を伝えていく。