東京六大学野球リーグの慶大を追いかけるYouTube「ANDTV」がこの3週間でチャンネル登録者数を倍増させ、1万2000人を超えるなど、アマチュア野球ファンの人気を集めている。「ANDTV」を主宰する、慶大野球部OBで元テレビ東京スポーツ局プロデューサー、現在は合同会社AND代表の山崎満靖さん(41)に、急成長の裏側を聞いた。(加藤 弘士)
企画も撮影も編集も全て一人で行う。12球団がそれぞれ一定のファンを有するプロ野球に比べれば、チャンネル登録者数、再生回数を伸ばすのは至難の業だ。しかし山崎さんは不可能を可能にした。
プロ野球のドラフト会議が行われた10月24日にアップした動画「【密着】高橋由伸、母校へ帰る…清原&丸田ら慶應の後輩へマル秘指導!注目の球縁物語第四弾!」は再生回数33万5000(11月8日17時現在)の大人気コンテンツになった。
「ドラフト会議という世間的な注目が集まる時に、どういうものが出せるかな…と考えていたとき、『24』といえば由伸さんの背番号だな、と。法大戦を終え、残りが早慶戦しかないタイミングで、清原正吾君に今一度、原点回帰して頑張ってほしいなというメッセージも込めて制作しました。チャンネル登録者数は翌日25日、1日で2000人ぐらい増えましたね」
一番の熱狂的な視聴者は慶大野球部関係者、中でも選手の親御さんだ。山崎さんは今回のコンテンツで勝負手を打った。ある選手のお父さんはベテランのグラフィックデザイナー。サムネイルの作成をお願いしたのだ。
「『お手伝いできることがあったら、何でも言って下さい』とのお言葉に甘えました(笑)。こちらも由伸さんに出演いただいたので、何とか多くの方に見てほしくて。そしたらサムネの違いで、結果は全然違いました(笑)。やっぱりプロのお仕事は、凄いですよね」
ヘビーユーザー層の視聴者が気づいたら「何とか力になりたい」と思ってしまうのも、早朝からチームの練習を追いかけたり、遠方への取材もいとわないなど、番組内に山崎さんの強い愛を感じるからだろう。
神宮球場で取材中、視聴者から声を掛けられる機会も増えた。そんなファンに対して山崎さんは「マーケティングリサーチ」を行う。番組を知ったキッカケは? 次はどんな番組が見たいですか?
「今までも有名アスリートのYouTube番組を制作させていただいたことがあって、100万再生とかも結構あるんです。でも『ANDTV』は本当にゼロからのスタート。だからテレビにはない、双方向的=インタラクティブなところをさらに意識して制作していきたい。見ていただく方と一緒に、楽しい番組、熱い番組を作っていきたいんです」
そんな山崎さんにとって、今後の夢はなんだろうか。
「神宮球場の収容人員は3万6000人。短期的には登録者数をここまで上げていきたいです。超満員札止めになった神宮球場をイメージして、魅力あるコンテンツを投入していきたいなって。学生野球はとても魅力のある世界ですし、そこで奮闘する指導者の方々の姿も魅力的な方ばかり。その本質をシンプルに正しく伝えていきたいと思っています。僕は野球のプロになれなかったけど、テレビのプロになって、ご飯を食べられた。人生を懸けて作るプロの映像を通じて、『一流の本質』をお伝えしたい。ずっと成長し続ける。ずっと挑戦し続ける。それが『エンジョイ・ベースボール』の精神だと思っています。映像を通じて一人ずつ、ファンを増やしていきたいですね」