◆大相撲 ▽九州場所2日目(11日・福岡国際センター)
脊髄損傷のため7場所連続休場から復帰3場所目の、元幕内で西三段目56枚目の炎鵬(伊勢ケ浜)が白星スタートを決めた。東同57枚目・翠桜(出羽海)との一番は、立つやいなや相手の懐に飛び込むと、左を深く差して鮮やかな下手投げで転がした。「立ち合いから自分の形になることができて、いい流れで自分らしい相撲が取れました」と納得の顔で振り返った。
再起不能寸前から土俵に戻ってきた。十両だった昨年夏場所、持病の首痛が悪化。初日から9連敗を喫した後に部屋へ戻ると体が動かなくなり、翌日から休場を余儀なくされた。脊髄損傷のため2週間の入院中は寝たきり。当初は握力が10キロ程度まで落ち、箸も持てなかった。医師から手術を勧められ、日常生活に戻るために相撲は断念するよう告げられた。
何度も引退が頭をよぎったが「相撲は生きがい」とする炎鵬は、諦めきれなかった。複数の病院を訪ねている中で回復の兆候が現れ、手術は回避。首の負傷で一時引退危機にあったラグビー元日本代表の堀江翔太氏をW杯4大会連続出場へと導いた佐藤義人トレーナーとの出会いもあり、首に負担のかからない体の使い方などを学んだ。1本のひもを結ぶ練習から始まった壮絶なリハビリなどの日々を乗り越えてきた。
昨年は長期休場中だったため、九州場所は2年ぶり。炎鵬は「毎回、初日が一番緊張しますし、去年の九州場所は出られませんでした。『ああ、帰って来られたんだな』という思いで、先場所とは違う緊張感がありました」と心境を明かした。10月上旬には故郷の石川・金沢市での巡業に参加。大きな声援を浴びた。「『戻ってきてくれてありがとう』と感謝の言葉をかけていただくことが多くて、僕の方こそ感謝です。すごい力をいただいて、励みになりました。一日一日必死に頑張っていきたいです」と気持ちを新たにしていた。