◆大相撲九州場所3日目(12日・福岡国際センター)
自己最高位の東前頭筆頭・王鵬が、大関・琴桜を2場所連続で撃破し、今場所初白星を手にした。昭和の大横綱・大鵬を祖父に持つ逸材は、9月の秋場所は場所中に右眼窩(がんか)底を骨折しながらも勝ち越し。目前に迫った新三役に向け、序盤のヤマ場、大関3連戦を1勝2敗で乗り切った。琴桜は初黒星。豊昇龍と大の里の2大関や平幕の若隆景、熱海富士ら7人が初日から3連勝を飾った。
大関を破った気迫あふれる相撲に、館内から「王鵬!」の声が沸き起こった。琴桜得意の右差しを許して土俵際まで追い込まれたが、左に回ってしのいだ。続けて左を差されたが、振りほどいて反撃。攻め手を休めず、相手が呼び込んだところを押し出して、先場所に続いて琴桜を撃破した。今場所初白星を手にし「体がよく動いた。しっかり我慢できたことが良かった」と、納得の表情で振り返った。
祖父は元横綱・大鵬で、父が元関脇・貴闘力。琴桜も母方の祖父が元横綱の初代・琴桜で、父が元関脇・琴ノ若(現・佐渡ケ嶽親方)だ。祖父は琴桜に通算22勝4敗と圧倒し、父同士は20勝20敗。3代目はこれで2勝4敗となった。2人は名門・埼玉栄高相撲部の先輩後輩の間柄で、場所前には佐渡ケ嶽部屋へ出稽古し、2学年上の先輩の胸を借りてきた。「よく稽古をつけてもらっていた。みっともない相撲は取りたくない」と、殊勲の白星で“恩返し”をした。
自己最高位の西前頭2枚目だった先場所は7日目の取組で右目を負傷。場所後に「右眼窩底骨折」で手術を受けた。場所中は目元が腫れ上がった状態で出場を続けて9勝を挙げた。しかし、新三役に届かなかった。今場所は東前頭筆頭で再挑戦。「しっかり我慢して勝たなければいけない。今場所は、特に」と懸ける思いは一段と強い。その中で初日の大関・豊昇龍戦で左目付近を負傷した。目元が腫れ上がり変色しているが、この日も臆することなく立ち合いから真っ向勝負。頭からぶつかっていくド根性を見せた。
初日からの大関3連戦は1勝2敗。「ここ2日は一方的な相撲を取られていたが、今日に限っては圧力を伝えられた」と、上位陣との戦いでの手応えを口にした。八角理事長(元横綱・北勝海)も「粘りがあった。強くなっている」と成長を認める。24歳の大器は着実に歩みを進めている。(大西 健太)