バスケットボール男子日本代表で最年長34歳の比江島慎(宇都宮)が13日、強化合宿中の都内で取材に応じ、下旬に行われる25年アジア杯予選2連戦が最後の代表活動になる可能性を示唆した。「ここで最後のつもり。五輪は不完全燃焼だったので払拭(ふっしょく)できるプレーができたら」と13年目を迎えた代表の“フィナーレ”へ、決意を込めた。21日モンゴル戦(宇都宮)、24日にアウェー・グアム戦に向けた合宿には、18歳・渡辺伶音(れおん・福岡大大濠高)らが参加した。
日本のために戦い続けたベテランが、大きな決断を口にした。パリ五輪後、今後の代表について明言を避けてきた比江島はこの日、「ここで最後のつもり」と21、24日の試合で区切りをつける意向を示した。続投が決まって挑む第2次ホーバス監督体制の初陣となり、「僕らが超えられなかった五輪8強に向かって進んでいくと思う。第一歩に携われることは光栄」と話した。
指揮官は続投を決める前、五輪メンバー全員に電話した。その際、比江島は「その先のW杯や五輪のところまでは考えていない」とはっきり伝え、次は自チームのホーム・日環アリーナ栃木で代表戦があることから「自分の気持ちとしては参加したい」と告げたという。
今回は主将にも就任。最年長でいじられ、愛されキャラの比江島は「冗談かと思った。富樫や(渡辺)雄太みたいな主将は無理かもしれないが、プレーで見せていけるように」と決意。富樫は「不安です」。ホーバス監督も「声が小さくて聞こえなかった」と笑ったが「(比江島は)皆がリスペクトする」とその人柄に期待を寄せた。
16年リオデジャネイロ五輪は出場権を得られず、19年W杯は5戦全敗で「自信を失った夏」と打ち砕かれた。21年東京五輪は3連敗。代表引退もよぎった。当落線上からメンバー入りした23年W杯ではベネズエラ戦で奇跡の逆転勝ちの立役者に。日本を48年ぶり自力五輪へ導いた。「国を背負って戦えることは本当に光栄。結果を残したい」。諦めなかった男が最後の戦いに臨む。(小林 玲花)
◆23年W杯ベネズエラ戦 第4Q残り8分12秒で最大15点ビハインド。そこから“比江島タイム”がさく裂し、4本の3点シュートを決めるなど同Qだけで17得点。大逆転勝利の立役者となった。日本は1967年大会以来、56年ぶりのW杯2勝を挙げた。カボベルデとの最終戦も勝利し、48年ぶり自力での五輪出場権獲得となった。
◆比江島 慎(ひえじま・まこと)1990年8月11日、福岡市生まれ。34歳。6歳から競技を始め、京都・洛南高から青学大に進み、4年時の12年に日本代表初選出。13年に三河に加入。Bリーグでは17―18シーズンにMVP。オーストラリアのブリスベン・ブレッツを経て、19年に栃木(現・宇都宮)に加入。通算402試合に出場し4698点、575本の3点シュート成功。W杯は19、23年大会、五輪は21年東京、24年パリ大会に出場。191センチ、88キロ。
◆バスケ男子日本代表活動 代表強化検討委員会は、選手が日本代表活動を辞退した場合、理由の正当性にかかわらず、期間中の所属先での公式戦出場を認めないとする規定を設けている。正当な理由がない場合は、さらに最大3試合の出場停止を科す。対象は、Bリーグ、大学生ら日本協会に登録する選手。フル代表の活動に限ったルールで、年代別代表は対象外。現状では“代表引退”の概念はない。比江島も今後は「協会やトムさんと相談しないといけない」と話している。