楽天の藤井聖投手(28)が、このほど「とうほく報知」のインタビューに応じた。今季は全て先発で22試合に登板し自己最多の11勝。先発ローテーションの一角としてチームを支えた左腕が今季を振り返り、今後の目標についても語った。(取材・構成=太田 和樹)
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楽天モバイルパークのバックネット裏の席に座った藤井がつぶやいた。
「良い景色ですね」
今季はスタジアムを訪れた楽天ファンに“良い景色”を提供し続けてきた。自己最多の11勝。防御率2・93で、年間を通して先発ローテーションを守り抜いた。春先から夏場にかけては7連勝を達成し、オールスターにも初選出。飛躍の1年となったが、既に来季に向けて気を引き締めている。
「11勝できてよかったという気持ちと、もう少し勝てたんじゃないかなという思いもあります。詰めの甘さもありましたし、自分に勝ちがつくまでイニングを投げられなかった」
課題は明確だ。22試合のうち、7回を投げ切れた試合はわずか4試合。のらりくらりと相手打者をかわす投球が持ち味で球数がかかることもあり、長いイニングを投げ切れなかった。
「代えられてしまうのは一番悔しかったところ。信頼を勝ち取れていないというのもありますし、球数がかかってしまってる。自分に対しての悔しい気持ちが大きかったです」
それでも勝ち星を重ねられた背景には昨年までの積み重ねがあった。ファームで直球を中心に投げ込みを継続し、今季限りで退団した小山伸一郎投手コーチから指導を受け、スライダーを猛練習。伝家の宝刀となり、活躍を支えた。
「1年目の時から小山コーチに『スライダーをとにかく練習しよう』と言われていた。スライダーだけでもいいから自分のものにしようとやり続けて一生懸命取り組んだ結果、自分の武器になるまで成長できました」
プレミア12の日本代表には同期入団の早川をはじめ、楽天から5人が選出された。中でも鈴木翔は小中学生時代、神奈川・瀬谷リトルシニアで共に白球を追った友人。誰よりも応援したい気持ちは強い。
「なぜ自分は選ばれないんだとか、悔しいとかいう感情は一切なくて。(鈴木翔は)素直に100%選ばれると思ってましたし、もう100%全力で応援したいなと思ってます」
オフは仙台市内で自主トレを行う予定。課題としている体力強化に加え、決め球をつくることが目標だ。
「三振を取れる変化球を増やしていくことを考えています。ただ、どの変化球がハマるかは分からない。新しい変化球を覚えることよりも、全ての変化球のレベルをもう1段階上げていきたい。加えて完投できる体力をつけていかなければいけないと思ってます」
4年目の今季、キャリアハイの活躍を見せた左腕の目標は「全項目において今年より全部キャリアハイ」。自らの投球で再び“良い景色”をファンに届けに行く。
◆藤井 聖(ふじい・まさる)1996年10月3日、神奈川・海老名市生まれ。28歳。静岡・富士市立高3年夏、藤枝東との1回戦では無安打無得点を達成も甲子園出場はなし。東洋大に進学も未勝利。ENEOSでは19年社会人日本代表に選出。20年ドラフト3位で楽天入団。176センチ、80キロ。左投左打。今季推定年俸1300万円。