記者という仕事をしていると、取材の中で緊張を感じることがある。首脳陣や選手へのインタビューなど一対一の場面はもちろん、普段の練習取材では、例えば状態の良くない選手からどんな問いで言葉を引き出そうかと気を使う。緊張とはどの仕事にも共通することだと感じるが、先日、プロアスリートがどのように緊張と向き合い、乗り越えようとしているのかを学ぶ機会があった。
非常に興味深い話をしてくれたのは、巨人の鈴木尚広2軍外野守備兼走塁コーチ。現役時代、代走のスペシャリストとして巨人を支え、その活躍は“神の足”とも称された。自身の走塁が勝敗を左右するような、修羅場の数々を乗り越えてきた同コーチは、こともなげにさらりと記者にこう言った。
「毎日、緊張感がないから緊張するんですよ。常に緊張感を持って、厳しさがあれば、その緊張感に対して怖さを感じなくなるんです」
鈴木コーチが語ったのは、緊張とは対応ができるものであり、そのためには日常に“サプライズ”を取り入れることが大事だ、ということだった。
「未知なものを体験させたり、常に何かに緊張感を持ってると、緊張感がある中でも緊張が保てるようになる。だから人は時々サプライズで緊張させた方がいいんですよね。何もなくて平和ボケしてるから緊張する。たまに満員電車に乗ってみるとか、知らない土地に行ってみるとか、知らない人に話しかけてみることも緊張。その“新しい緊張”をやっていくことで、どんな緊張感に対してもちゃんと対応できるようになる」
今オフは、快足が武器の育成・舟越を登山に連れていく案を温めている。これもまた、非日常の中から刺激を感じさせ、新たな気付きを与えるための試みなのだという。30歳中盤に差し掛かった記者も、「新しい緊張」を求めて行動してみようと考えている。(巨人ファーム担当・小島 和之)