◆大相撲 ▽九州場所7日目(16日・福岡国際センター)
東前頭11枚目・玉鷲が40歳の誕生日を自ら祝う快勝劇を見せた。昭和以降6人目の“不惑幕内力士”となったベテランは、同9枚目・翠富士の立ち合い変化にも惑わされず、力強く押し倒し。4勝3敗で白星先行となった。大関・豊昇龍と平幕の阿武剋(おうのかつ)がともに敗れ、全勝が消えた。1敗で大関・琴桜、豊昇龍に平幕の隆の勝、阿武剋。2敗で新大関・大の里ら8人が続く展開となった。
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28歳で引退した私が40歳の玉鷲を評論するのは“顔”じゃない。驚愕(きょうがく)という言葉しか見つからない。左に変化した翠富士の一番も力強かった。懐に入れずに突き放し、右のど輪で土俵にたたきつけた。
二所ノ関一門の力士として新弟子の頃から見てきた。花が咲いたのは30歳を過ぎてから。基礎運動で汗を流してから土俵に上がる努力の積み重ねが、遅咲きの鉄人を作り上げた。ベテランになると連合稽古では若手を指導するだけだが、玉鷲は幕下以下の力士と同じ時間に土俵に下りて、砂まみれの背中を若手に見せてきた。
体の張りも文句ない。引退の近い力士は、お尻と胸の筋肉が確実に落ちるが、玉鷲の体は盛り上がっている。08年に幕内に上がってから十両に落ちたのはわずか5回。幕内という厳しい土俵で戦い続けているのも価値がある。あと4、5年は現役生活を続けることができるだろう。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)