◆2026年北中米W杯アジア最終予選 第5戦 インドネシア0―4日本(15日、インドネシア・ジャカルタ)
【ジャカルタ(インドネシア)16日=金川誉】2026年北中米W杯に向けたアジア最終予選第5戦のインドネシア戦(15日・ジャカルタ)に4―0と勝利した日本代表は、同第6戦の中国戦(19日・福建省アモイ)に向けて移動した。大勝の裏で、6万304人が詰めかけたスタジアム、そして試合前の準備期間にも、日本代表選手たちが「うらやましい」と語るほど、インドネシアには高いサッカー熱があった。同国サッカーの現状と、日本選手が漏らした感情の正体を「見た」。
× × × ×
試合が終わったスタジアムには、数多く残ったインドネシアサポーターが歌うナショナルソング「Tanah Airku」が響いていた。意味は「あなたを誇りに思います」。インドネシアの選手達は、ピッチ中央で円陣を組み、この声を聞いた。国籍変更でチームに加わった選手たちの中にも、目に涙を浮かべている選手がいたという。
結果としては、日本が力の差を見せつけた試合。ただ、試合前から日本選手たちが語っていた“ある言葉”が忘れられない。ジャカルタの空港に到着した際、深夜にも関わらず10台以上のテレビカメラやファンが詰めかけ、DF長友は「非常にうらやましいなというのはありました」とそのサッカー熱に驚いた。MF久保も、100人近いインドネシア・メディアが日本代表の練習にも訪れた現状に「人気なんだと思いますね。サッカーが。うらやましいです」と漏らした。日本代表の選手が、他国を「うらやましい」と表現することは決して多くはない。
試合ではインドネシアが攻撃するたびに、地響きのような大歓声が上がり、MF三笘は「あれだけ沸かれると、自分たちも劣勢なんじゃないかという雰囲気も出ます」と明かしていた。アジアからのW杯出場枠が4・5から8・5に増加した今予選。インドネシアは国籍変更選手も多数加え、オランダ領東インド時代の1938年以来、86年ぶり2度目のW杯出場を目指している。2億7000万人超の人口のうち、70パーセント以上がサッカー好き、と言われる同国。ジャカルタ市内の至るところに広告起用された選手たちの写真があふれる様子も、サッカー人気の高さを物語っていた。
同国メディアのスププンヤ記者は「インドネシアがサッカーを体系的に発展させ始めたばかりに対し、日本は何十年も渡って構築してきたプロセスの成熟を示す結果だった」と試合を振り返っていた。日本サッカーは7度のW杯出場を経て、着実に成長を遂げている。ただ人口、サッカー熱とともに日本を上回るインドネシア。日本が歩みを止めれば、すぐに追いつかれてしまう―。選手達の「うらやましい」という言葉に、ある種の危機感が含まれていることは確かだ。