日米通算4367安打を記録したイチロー氏(51)=現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が18日、愛知・春日井市内にある母校・愛工大名電のグラウンドをサプライズ訪問。3年生も含めた部員45人(女子部員1人を含む)に指導を行った。高校生の指導は11校目だが、母校は初めて。春夏25度の甲子園出場、05年センバツVの名門に“イチ流”の金言を授けた。
午後1時20分頃、練習開始。ホーム付近に整列した部員のところにイチロー氏が登場すると、驚きの声と拍手が起きた。
「拍手、いらないから(笑)。初めてだね。3年生はバッティンググローブ、来たでしょう? 回収です。ベスト8は最低、行ってくれないと。秋の成績は?」
部員が「ベスト16です」と話すと、イチロー先輩はぴしゃりと言った。
「1回戦負けと一緒でしょ。愛工大名電にとっては。ここに来た理由は、僕のことを知ってくれているという情報があった」
「実際に対面してみてどう?」との問いに、「かっこいいです」との声が上がると、「そういうの、いらないから」とイチロー氏。「(練習の前に)寮や施設などを見学させてもらいました。で、この成績はないでしょ。この施設を持っている学校、ないでしょ。当然、甲子園もそう(目標)でしょうし、そのあと、どうなのか。卒業したあとに、プロで活躍したいという子が多い。監督の話を聞いていて、僕がみんなに教えることはないです。疑問、聞きたいことがあったら、聞いて下さい」と自発的な問いかけを求めた。
愛工大名電は最新鋭の機器を導入。投球や打球の速度や回転を詳細に測定し、分析する「データ野球」を採り入れている。
「気になったのは、データで見えていないことを大事にしているか。それ(データ)だけじゃないこともある。気持ちがどう動くか、感性とか。データでがんじがらめになって、感性が消えていくのが現代の野球。自分で考えて動く。この施設はそれと同じような考え方になっている。僕が伝えられることはそれ以外のことです」と持論を述べた。
「みんなのことは気にしていた。すごく見ていた。夏の甲子園予選から見ていた」と母校愛を語ったイチロー氏。独特の緊張感に包まれる中、練習が始まった。