直木賞作家の今村翔吾氏が20日、新たな文学賞「日本ドラフト文学賞」を創設することを発表した。同賞は日本ではじめて選考委員をおかず、複数の出版社やメディア関係者によるドラフト制度によってプロ作家の輩出を目指す文学賞だ。
文学界に輝く一石が投じられた。キーワードは「発掘と復活」。最終選考のドラフト会議は佐賀新聞を会場とし、作品の書籍化を目指す。
同賞のプロデューサーをつとめる今村氏は「文学賞のエンターテインメント化を目指す。生で本を見たことない子供たちが増えていく未来がすぐそこまで来ている。若者たちが本と付き合っていくのか、付き合っていかないのかの未来の選択肢を残したい」と熱弁。「佐賀から全国へ、全国から未来へ。本と未来の開拓者を発掘し、作家今村翔吾が手がける地方の新たな文学賞を創設していこうと思っております」と話した。
「復活」には、他文学賞で落選した作品も積極的に受け入れ、「デビューの間口をひろげたい」という思いとともに、自身のデビューのきっかけでありながら17年に幕を下ろした「九州さが大衆文学賞」のレガシー継承への思いも込められている。「僕は歴史作家なので、復活という意味で言うと、九州に落ちのびた足利尊氏が、もう一度上洛していったかのように、中央の賞で落ちた作品が『ほれ見たことか』と”上洛”していって、全国でめちゃくちゃ活躍してっていう、そういうことも夢物語ではないと思っています」
同文学賞では最終選考で作者の自己PRの時間も設けており、選考の様子はYouTubeで配信予定。デビュー前からのファンの獲得にも期待を込め、「ゆくゆくは甲子園球児への密着取材のようなことがデビュー前の作家へ行われるようになれば」と展望を明かした。
名誉顧問は北方謙三氏が務め、最終ドラフト審査には現在のところ、小学館や祥伝社、アミューズクリエイティブスタジオの参加が決まっている。即映像化なども視野に、出版社以外の幅広いメディア業界の選考参入も期待している。育成枠での獲得も可能で、1人の応募者に複数社の「指名」があった場合は抽選によって交渉権が決まる。
400字詰め原稿用紙200枚から500枚までの自作長編エンタメ作品を25年4月末まで募集し、最終選考会は9月中旬の予定だ。「まずは、どこに応募していいか分からない時に応募してほしい。僕らはなんでもオッケーです。もうひとつは、出版社の賞に応募して落ちて納得いかん時。自分が本当にダメだったのか、そういうのをチェックする場としても使ってほしいです」。
日本初の「ドラフト1位指名作家」が生まれる日が近い。(瀬戸 花音)