タンパク質の構造を予測するAI(人工知能)「アルファフォールド」を開発し、2024年のノーベル化学賞を授賞した英グーグルディープマインド社のデミス・ハサビス氏が21日、東京・千代田区の日本棋院で井山裕太王座との記念対局に臨んだ。ハサビス氏には九段免状が贈呈され、一力遼棋聖との特別対談も行われた。
ハサビス氏は自身が創設したディープマインド社で囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」を開発。16年にはアルファ碁が、当時世界最強と言われた韓国のイ・セドル九段との五番勝負で4勝1敗の成績を残し、囲碁界に大きな衝撃を与えたことでも知られる。
免状を受け取ったハサビス氏は「囲碁のふるさとのように思う日本棋院に来ることができ、大変光栄です。免状を頂戴し、偉大なる井山さんと対局をでき、大変うれしく光栄に思っております」と笑顔を見せた。
そして、「私は主にチェスを楽しんでおり、囲碁をはじめたのはケンブリッジ大の学部生のときです。アルファ碁によって、AIの近代化の第一歩を踏み出せた。これからも人工知能の力を借りながら、多くの課題を解決していきたい。過去、それから現在の囲碁をたしなまれている皆様に感謝を申し上げたい。囲碁を楽しむ皆様がいたからこそ、アルファ碁が生まれ、アルファフォールドの開発につながった」と囲碁への思いを語った。
日本棋院の武宮陽光理事長は「心からの感謝と喜びの気持ちを込め、日本棋院より最高位の九段の免状を贈りたいと思います」と話した。
碁盤を挟んだ井山は「ノーベル化学賞授賞本当におめでとうございます。お目にかかれて光栄ですし、実際に対局をさせていただき、時間の都合で序盤の30手ほどでしたが、一手も悪い手がなかった。実力に驚いています」とハサビス氏を称賛。また、井山が「アルファ碁は囲碁界に大きな影響を与えました。人工知能の発展に囲碁が役に立てたなら、囲碁棋士として光栄なこと。これからも人間同士の戦いをお見せできるよう囲碁棋士も頑張っていかないといけないなと思います」と続け、「これからも囲碁に触れていただければうれしく思います」と語りかけると、ハサビス氏は笑顔で大きくうなずいた。