富士大(東北3連盟・北東北)は明治神宮大会できょう22日、初戦の準々決勝で創価大(関東5連盟第1・東京新)と対戦する。チームを指揮して5年目の安田慎太郎監督(39)は今秋、ドラフト会議で6人の選手が指名されるなど計7人のプロ野球選手を輩出。大学4年間での成長につながる選手獲得のポリシーや、“安田ラボ”とも呼べる指導方法などを聞いた。
(取材・構成=有吉 広紀)
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現日本ハム・金村や今年の6選手は富士大で大きく成長した。だが高校時代は、必ずしも“プロ注目の選手”ではなかったという。安田監督には、狙いがあった。
「入学したとき、うちで上のランクでいうとドラフトでも育成にかかるかどうかくらい。4年間で指名される選手にという過程で、伸びる選手を取ろうと考えた。長打力、コンタクト(ミート力)、足、肩、守備のうち最低3つが高くないとプロにはいけない。だから、守備や肩が良ければうちで打撃を良くしようとか、そういう考え方です。麦谷なんかそんな感じです」
成長する選手には共通項があった。
「人の話を聞けるか、ですね。話を聞いて、やってみようとか前向きに取り組むことができないのは無理。一番伸びる選手は人の話を聞いて素直な選手だよ、それがなかったら自分で考えてやっても無理だよ、と入ってきたときに話します。技術を教えるのではなく、人の話を聞き入れられる状態にするのが先です」
富士大の室内施設には筋トレのための様々な種類の器具がそろっている。これも安田監督のこだわりの一つだ。
「他の大学にはないマニアックなもの、ありますね。SNSとかで情報収集します。他競技のもあります。米国でやり投げの選手が使っているベンチプレスがあって、やり投げと投球動作ってほぼ一緒なので、これいいじゃん、と」
ウェートトレーニング(ウェート)は強制的にやらせる。この「やらせる」ことが大事だという。
「結果が出れば勝手にやるので。ウェートやって球速が上がった瞬間、そういうことだと気づく。体で覚えて必要だと思えば自分でやります。あとは追い込み方、栄養の取り方、休養の取り方で差が出る。そこをどれだけ徹底できるか」
現在監督5年目。トレーニング方法でこれまで変わらないスタンスがある。
「毎年新しいことをしています。実験ですね。こうなるんじゃないかと仮説を立ててデータを取って実証して、効果のあるものを残す。今は腹筋をやったら足が速くなってきて走力が上がると、(腹筋の)優先順位が上がってきた。逆にあまり効果を感じないものはやめます。無駄なトレーニングをさせないほうが選手が良くなる」
発展途上の選手たちと、様々な実験をしながらともに成長する。そこにやりがいを感じている。
「そういう選手が好きなんですよ。何か一つすごいとかワクワクするじゃないですか。(能力の)低いところはどうにかするから、『しっかりと力をつけたらどうなっちゃうんだろう』という感じがいいんです」
◆安田 慎太郎(やすだ・しんたろう)1984年12月17日、宮城県仙台市生まれ。39歳。仙台高から東北学院大に進む。クラブチームや独立リーグを経て、2016年から富士大コーチ。20年7月に監督就任。監督として春3度、秋3度の計6度リーグ優勝。現役時のポジションは外野手。
〇…チームは21日、神奈川県内のグラウンドで創価大戦に向けて調整した。オリックス1位の麦谷は「自分の夢はかなったので、次はチームの夢をかなえたい」と、目標の日本一に向けて一戦必勝で臨むと意欲。広島2位の佐藤は「(4強入りした)去年と変わらず、勝つことだけを考えて一戦一戦全力でいく」と力強く語った。