国民民主党が要求する103万円の壁引き上げが政府の経済対策に盛り込まれた。小泉改革以降、大企業や富裕層向けの減税は行われてきたが、一般国民向けの減税は、小渕内閣の定率減税以来、実に25年ぶりだ。選挙で政治は変えられることが実証されたのだ。
もちろん経済対策に盛り込まれたのは項目だけで、具体的な減税幅は年末の税制大綱に記載される。すでに財務省は減税規模の大幅圧縮に向けて、メディアや評論家、政治家を総動員するなど、あらゆる手段を繰り出して、巻き返しに出ている。だから、国民民主党の幹部や議員は、スキャンダルが出ないように十分、気をつけるべきだ。これから1か月は、自宅引きこもりでもよいと思う。
そして、今回の103万円の壁引き上げは、思わぬ副産物をもたらした。それは、どの政党、メディア、評論家が財務省の下僕かを判定するリトマス試験紙が得られたということだ。
「財源の議論なしに壁を引き上げるのは無責任」という発言をする人は、すべて財務省の下僕だ。そもそも7兆円程度の小さな減税で財源を議論する必要などない。減税で国民の手取りが増えれば、消費の拡大を通じて将来の税収が増えるからだ。
そもそも、今回の経済対策の事業規模は20兆円を超える。そちらの財源を追及しないのに、なぜ7兆円の103万円の壁だけ財源論を持ち出すのか。それは、一般国民の増税・増負担を推進してきた財務省への忖度(そんたく)以外に考えられないのだ。
103万円の壁に関してダンマリを決め込む立憲民主党、財源論で減税の矮小(わいしょう)化を画策する大手メディア、そしてあらゆる理屈を繰り出して減税を否定する評論家たち。この四半世紀の日本経済低迷の原因は、財務省の緊縮政策と、それを支えた彼らの言説が原因なのだ。(経済アナリスト)