◆第104回 天皇杯▽決勝 G大阪0―1神戸(23日・国立競技場)
G大阪は天皇杯決勝で神戸に0―1と敗れ、15年の天皇杯優勝以来、9大会ぶりのタイトルを逃した。勝てばクラブ史上10冠目のタイトルだったが、頂点にはあと一歩届かず。試合2日前に右ハムストリングスを負傷し、この日はベンチ外となった元日本代表FW宇佐美貴史も国立まで駆けつけたが、チームの敗戦を見届け涙に暮れた。
リーグ戦ではチームトップの12ゴール8アシストと攻撃の中心を担う宇佐美を欠いたが、前半は小気味のいいコンビネーションで神戸陣内に侵入した。ポヤトス監督が「神戸の武藤選手、宮代選手のところがプレッシャーにくるのはわかっていました。倉田秋を中に入れて、相手のサイドバックの酒井選手をブロックしつつ、サイドで2対1をつくる、という対策をしっかりとやってきた。そこがしっかりとできた前半だった」と語ったように、相手のハイプレスを左SB黒川圭介がいなしつつ、左MF倉田秋とのコンビで、神戸の右SB酒井高徳が守るサイドを崩しにかかった。
前半9分には左サイドを起点に押し込み、MF山田康太のクロスからMFダワンが決定的なヘディングシュートも放った。しかし神戸の堅い守備にはね返され、0―0でハーフタイムへ。すると後半は「相手はラインを上げ、2対1のところを対策し、ずれがなかなか作れなかった。こちら(ベンチ)からもなかなか指示が届かなかった」と指揮官。そこで0―0の後半10分、ポヤトス監督はMF倉田に代えてMFウェルトンを投入し、個の力でのサイド打開にかけた。
しかし後半19分、GKのロングボールから神戸MF佐々木に起点を作られ、FW大迫、武藤とつながれて、最後はこぼれ球をMF宮代に押し込まれた。前半から必死に大迫ら神戸のFW陣を封じていたDF福岡将太は「佐々木選手が入ったことで、(相手前線に)ポイントが増えることは進(中谷)とも話していた。重々わかっていたんですけど、やはりチームとして(守備を)分散させられてしまった。CBがファーストをはじく、それが出来なくてもセカンドボールを拾う、というのがポイントでしたけど、あの一瞬だけは…」と悔やんだ。
最後までゴールは割れず、公式戦では5試合ぶりの無得点で敗北。宇佐美不在の影響はなかったのか。ポヤトス監督は「そこは言い訳はしたくない。他の選手たちも(宇佐美負傷で)気持ちを高めていってくれたと思いますし、感覚的には影響はなかったと自分自身では思っています。本当に言い訳なく、全員がしっかりとやってくれたと僕自身は思ってます」と言い切った。ただ精度の高いセットプレーや、相手の堅いブロックを崩すアイデア、攻撃のリズムを変えるプレーなど、神戸の堅守を崩すプレーが少なかったことは事実だ。
昨季はリーグ戦で16位とJ1残留争いに陥ったチームが、今季はここまでリーグ4位、天皇杯は準優勝。DF中谷進之介らの加入で守備が安定した。就任2年目となるポヤトス監督の求める、ボールを保持して相手を押し込むスタイルも形になりつつある。クラブはポヤトス監督に来季も任せる方針を固め、来季続投が濃厚に。ただゴール前は宇佐美やウェルトンら個のタレントに依存する部分も多く、得点力のアップは来季に向けた課題だ。
天皇杯決勝で敗れたのは、川崎に敗れた2020年度大会以来4年ぶり。しかし、5バックの守備的な布陣で当時三笘、守田、田中碧らを擁した川崎に敗れ去った当時とは中身が違う。この悔しさを、どう来季につなげるか。福岡は「(宇佐美)貴史くんの去年の苦しい姿だったり、(低迷時に)サポーターと話して涙している姿も見てきたので、やっぱりメダルをかけてあげたかったし、カップを掲げてほしかった」と、取材エリアで悔し涙をこぼした。9年ぶりのタイトルにあと一歩届かなかったこの経験を、先にある10冠目への血肉とするしかない。