「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」で侍ジャパンの一員として戦った巨人・井上温大投手(23)が24日、スポーツ報知に大会の「体験記」を寄せた。自身初の国際試合で、追加招集ながら開幕投手として白星を挙げるなど3戦3勝。チームは台湾に決勝で敗れたが、侍に貢献し、大きく成長を遂げた左腕が、日の丸を背負った思いを明かした。
野球をやるからにはプロ野球選手になって、子供たちが憧れるところを目指したい。だから一番上になるために日本代表になりたい、と思っていました。その小さい頃からの夢だったジャパンのユニホームを着てプレーできたことは、本当に感慨深かったですね。
国際大会は投げている時はすごい静かで、いつもと違う緊張感がありました。開幕投手を任せてもらってから、結果は失点してしまったので、満足がいくものではなかったです。特に3登板目(22日・ベネズエラ戦)は気持ちを強く持って臨んだんですけど、空回りしてしまって、制球もアバウトになってしまったり、反省もありました。目指していた世界一とはなりませんでしたが、様々な経験ができたことは間違いありません。
収穫は引き出しが増えたことです。いろいろな選手に話を聞きました。例えば(西武の)隅田さん。三振をチェンジアップとかフォークで取れる投手。僕もフォークの制球力が上がればいいなと感じるので、何かヒントがあればと思って聞きました。握りも軌道も回転数も全然違って、面白かったです。
ジャパンのデータのスタッフにもいろいろ聞きました。自分の強みや、シーズン中に対左打者の被打率が右より圧倒的に高くて【注】、それを下げるためにどうしたらいいか。左打者に打たれているのはフォークを投げていないから。フォークも左に投げることで被打率が変わるかもしれない。あとは140キロ近いフォークを投げる方法とか。参考になりましたね。この侍で聞いた話は、全部紙に書いてあるので、今後、ジャイアンツに持ち帰って、コーチやデータの方に相談しながら、自分に合いそうなものは取り入れたいと思います。
【注】今季公式戦の被打率は右が2割5厘、左が2割7分。
僕はもともと人と距離を詰めることが苦手なので心配していたんですけど、友達もできました。(中日の)清水さんと、同学年の(ロッテの)横山には僕から話せるようになりましたね。清水さんはお兄ちゃんみたいな感じ。試合ではカッコいい顔して投げるのに、意外と面白いんですよ。結構冗談とかいうタイプでした。
実は一番の収穫は戸郷さんと話せたことなんです。戸郷さんは僕のことをすごく心配して一緒に行動してくださるので、お風呂に一緒に入ったり、栄養の話、ピッチングの話などたくさんできました。正直に言うと、巨人にいる時は登板日の関係とかでそんなに話をしたことがなくて、僕はもっと大ざっぱな人かな?って思っていたんです。記事とかで、深部体温を下げるためにアイスを食べてるとか書いてあって…。でもかみ砕いて聞いていくと、一つ一つにこだわりがある。本当に細やかなところまでこだわって野球につなげているんだなって感じました。周りの選手からも質問攻めにされていて、やっぱりすごいんだなって。近くにいられるのでもっと聞こうと思いましたね。
僕はこの期間で体重が増えました。2キロぐらい。顔が丸くなってませんか?台湾とかにいると、よりお米とかがおいしく感じるので多分食べ過ぎですね…。戸郷さんが台湾に炊飯器を持ってきてくださってお米を食べていたので…。戸郷さんの炊いたお米、めっちゃうまかったです。
この期間は本当に他の人にはできない経験ができているなって思います。最初、選ばれたことはうれしかったですけど、大丈夫かなって不安だったんです。でもやっぱり来てよかった。行ったら何かしら得て帰ってこようって自分の中で思うので、それができました。もちろんジャパンのメンバーに選ばれてこの舞台に立てたことは自信になります。でも一年だけでなく、何年もこの舞台に立ってこそだと思うので。この一年に満足しないように、今回つかめなかった世界一を次こそはつかみたいです。(巨人投手)
◆井上 温大(いのうえ・はると)2001年5月13日、群馬・前橋市生まれ。23歳。幼稚園年長から野球を始め、大胡中では軟式野球部。前橋商では1年秋からベンチ入りも、甲子園出場なし。19年ドラフト4位で巨人入団。21年に左肘の手術を受けて育成落ちを経験。22年にプロ初勝利を挙げた。今季は先発・中継ぎ計25試合に登板して8勝5敗、防御率2.76と飛躍した。175センチ、78キロ。左投左打。今季年俸は670万円(推定)。
◆今大会の温大 日本の開幕戦となった13日のオーストラリア戦(バンテリンD)に先発し、6回途中2失点で今大会1勝目。18日のドミニカ共和国戦(台湾・天母)では戸郷からバトンを受け、5回から2番手で登板。2回1安打1失点で2勝目を挙げた。さらにスーパーR・22日のベネズエラ戦(東京D)では3―2の6回に2番手で登板。逆転2ランを浴びるなど1回3失点も、その直後に牧の満塁弾が飛び出すなどし今大会3勝目が舞い込んだ。